2020/02/12

北村明子さんのフランツリスト「歌の本」

毎年2月ごろ、東京芸術大学の学生の考査のコンサートがある。
その中には、博士課程の大学院生の単独のコンサートもあり、これは案外、若手実力派が出ることがある。
去年は長尾春花さんというバイオリニストのコンサートで、バルトークの無伴奏バイオリンのためのソナタだった。
ステージの長尾さんは小柄でかわいらしく、演奏は知的で控えめ、博士課程に在籍する現役学生なので、何となく、派手なタイプよりも職人タイプが多いのだろう。
彼女の演奏を聞き、十分活躍できそうだと思ったが、後日、彼女の名前を音楽雑誌かなにかで見かけた。
さて、今年はピアニストの北村明子さんである。


上野の森美術館


まず芸大のキャンパスに行く前に、上野公園のエレベーターを上がってすぐのところの上野の森美術館に立ち寄った。
絵画教室の学生の受賞作品の展示会である。
正面入口は閑散としている。
この前の展示会はフェルメール、このときは入口に大行列ができており、事件でもあったのかと思うほどだったが、それとは対照的である。


上野の森美術館絵画教室の学生の受賞作品の展示会


上野の森美術館絵画教室の学生の受賞作品の展示会




ギャラリーをざっと見て回った。
絵画教室の学生の作品は、大人の作品とは違うし、プロや芸大生の作品とも違う。
生命力や躍動感があり、力強さというか何というか、持て余しているエネルギーのようなものが込められている。
そこが学生作品の魅力だと思う。


旧奏楽堂


その後、芸大キャンパスに行く途中、交差点の手前にある旧奏楽堂にも寄り道。
これまでも何度か中に入ったことはあるのだが、こないだ芸大卒の陶芸家の女性と奏楽堂の話をしたら、現在の奏楽堂ではなく旧奏楽堂の思い出話をしてくれたので、何となく中を見たくなったのだ。

旧奏楽堂内を30分ばかり見てから、芸大キャンパスの奏楽堂へ。
奏楽堂の入口にはすでに50人程度の列ができていた。
北村明子さんの今回の演奏曲はリストである。
「歌の本」というマイナーな曲集で、パンフレットを見ると、どの曲も題名が直訳されており、ピンと来るものではなかった。
題名が直訳されている場合、曲が難しくて聞きにくいものが多いように思う。
今日はどうだろう。


奏楽堂北村明子ピアノコンサート


北村明子さんの演奏が始まった。
フランツリストというと「ラカンパネラ」「愛の夢3番」などが有名である。
しかし、その手のピアノ曲とは雰囲気が違うものもリストにはある。
実は作曲家としてのリストはスピリチュアルな世界に傾倒し、「ヴェネツィア」などの宗教的瞑想的な曲も数多く残している。
こちらはお馴染みのリストと比べるとやや退屈に感じるが、テクニカル的にも表現的にも極めて難度が高いものばかりだ。
彼女の考査のコンサートは、うしろで教授陣が採点しているためなのか、演奏も仕草も終始ぎこちなかった。
ただ、彼女は小柄だが姿勢と弾きっぷりがいいのだ。
後半はのびのび演奏するようになり、本領を発揮していたと思う。

プログラムの最後の曲が終わった。
コンサートといってもこれは考査なので、アンコールもなくあっさりと終了。
拍手のなか、鮮やかなドレス姿の彼女はすぐ舞台袖に消えてしまった。
去年の長尾さんのように彼女も活躍できるといいな、と思って私は拍手を送ったが、次回は彼女のリストではなく、ショパン、モーツアルトあたりを聞いてみたいものだ。


昇龍のワンタンメン


さて、コンサート後は帰宅するつもりだったが、こないだの地方創生イベントで知り合ったHさんが、ゲームで街おこしという類似のテーマでイベントをするから来ませんかというので、もしかして行くかも、とだけ伝えていた。
上野から外苑前まで30分ほどかかる。
どうしようか迷ったが、アメ横を歩き、途中のラーメン屋「昇龍」で早めの夕食をとりながら、ちょっとだけ顔を出すことにした。
上野広小路駅から銀座線に乗り、外苑前へ。

ゲームで街おこしの会場は、外苑前駅から歩いてすぐのオフィスビルのなかで、私が通うワイン教室「キャプランワインアカデミー」のすぐそばだった。
エレベーターを上がると、ここって、PRタイムズのオフィスではないか!!
女性に案内されてガラス張りのオフィスを横切り、奥の広いラウンジに入った。
オフィスの中を見回した私は、PRタイムズはずいぶん大きな会社になったものだなあ、と思った。
別にPRタイムズのことをよく知っているわけではないのだが、PRタイムズのサービスのことはかなり昔から知っており、上場したことも知っていたので、何となくそう思っただけである。

きれいなオフィスとは裏腹に、ゲームで街おこしのイベントは実に簡素なものだった。
最初にSNSのマーケティングをしているという会社の女性社長が30分ほど講演をした。
その後、Hさんのゲームで街おこしの講演となった。
身体を動かすゲームのことを「Eスポーツ」という。
Eスポーツの大会を地方で開催し、地方経済を活性化しましょう、という地方創生の話である。
田舎なら場所も設備もあるし、ゲームなら若者が集まりやすい。
過疎化に悩む地方自治体はありがたいでしょう、ということだ。
まあ、しかし、全体としてはなかなか興味深い話だが、まだ具体的な話には至っていないようだった。

その後は立食の懇親会。
今日は全員と名刺交換をしてください、とHさんが会場に周知したので、軽食をとりながらほぼ全員と名刺交換をする「はめ」になった。
この試みはHさんの配慮と思われたが、お互いじっくり話す時間がないので誰とも親しくなれないという問題がある。
また、名刺を数枚しか持ち歩いていない人は困るだろう。

おや、今から名刺交換をするこのおじさん、いま気付いたのだが顔見知りである。
こないだの地方創生イベントで知り合った不動産会社の部長Fさんではないか。

その後の私は、ほとんどの時間、彼と雑談をしていた。
帰り道も途中まで一緒で、電車内でもいろいろな話をした。
電車をおりるとき、今度ランチでもしましょう、ということになり、とりあえず3月にその予定を入れた。
いまは新型コロナウイルスのことがある、3月はどうなるか分かりませんけどね、そんな言葉を交わして私たちは別れたのだが、これからどうなるのだろうか。