2021/12/27

奥田雄太展示会(1)2021年ギャラリーめぐりの締めくくり

資生堂美容室⇒奥田雄太展示会(石川画廊)⇒ABCクッキング丸の内

今年最後の週末である。
毎年恒例の、散髪、展示会、料理教室にいってきた。
普段ならここに湯島天神の終わり詣も含まれるが、すでに終わり詣は済ませたので、散髪前に重要な用事を入れていた。
が、電車の大幅な遅延で、その予定は変更となった。
そのため私はお昼ごろ直接美容室へ行き、散髪が終わったのは14時近く。
その後は、資生堂ビルのすぐ近くの石川画廊へ。
最近知り合ったアート友達Iさんのおすすめで、奥田雄太さんの個展を見るためである。


石川画廊、奥田雄太


すずらん通りの雑居ビルの1階、こじんまりとした画廊、この日は最終日で奥田さん本人が在廊していた。
奥田さんの作品は花柄の素敵なものばかり、しかも一見して女性の作風である。
私は、目の前のこのお兄さんが本当に??と思った。
早速、そのまんまの質問をぶつけてみると、私はこう見えてもメンタルは強くない、内面はこの絵のイメージなんです、との答え。
確かに奥田さんと話していると上品な感じがするので納得。
話しながら15分ほど作品を見てまわり、最後はブルーの作品(私のお気に入り)の前で記念撮影。
それから、ふと思ったのだが、私の大好きな水野里奈さんの絵と何となく雰囲気が似ている、そのことを奥田さんに話すと水野さんと同じギャラリー(ミヅマアートギャラリー)に所属しているとのこと。
そこから水野里奈さんの展示会のことにも話が及んだ。


石川画廊、奥田雄太


石川画廊、奥田雄太


それにしても奥田さんの個展、私の2021年のギャラリーめぐりの締めくくりとして、ふさわしかった(つまり、いやされた)。
そもそも私は美術の専門家ではなく、初見では分かりにくい作品もよくあるのだ。
しかし、奥田さんの作品は予備知識も解説も一切不要、初見でも直感的にイイ、と思えるものである。


クリスマス料理、牛肉のハンバーグ


さてこの後の予定だが、、、有楽町のビックカメラで買い物をした後、国際ビルのABCクッキングに行った。
今年最後のABCクッキング、こちらの締めはどのようなものになるのだろう、と思って。
本日のメニューは、牛肉の赤ワイン煮込み。
そういえばクリスマスは家で、以前東京会館で習った若鶏のフライ(マリラン風)を自分で作る予定だったが、私の帰宅が遅かったため、うちのママ殿が牛肉のハンバーグを作っていた。
そのため、2日連続の牛肉メニューとなる。


ABCクッキング、牛肉の赤ワイン煮込み


ABCクッキング、牛肉の赤ワイン煮込み


この日の朝、私は急いで適当に選んで予約を入れた。
丸の内教室はよく知らないし、E先生は初めてであるが、E先生はあのK先生よりも美人!!
そもそも初対面の女性はミステリアスである。
しかし、E先生は予備知識も解説も一切不要、初対面でも直感的にイイ、と思えるのである。
料理の先生は「愛と平和のいやし系美人」であることが多いが、これもまた、2021年の締めとして、ふさわしかった(つまり、いやされた)。


ABCクッキング、牛肉の赤ワイン煮込み


帰宅後、私は、この日のことをワインの師匠T先生と、Sさん(例のピュリニーモンラッシェなどを言い当てるワイン通の女性)に報告した。
T先生とSさんは、私の相談役(お姉さま)でもあるのだが、早速、先生からメールが。

「なかなかアグレッシブな生き方、良いと思います。」

なるほどね~。
先生、来年もがんばります!!

2021/12/25

WATOWA GALLERY、偶然の再会

この日の私は渋谷に用事があった。
用事が済んで、宮益坂を上がり、住宅街の中にある小さなギャラリー「WATOWA GALLERY」に着いたのは12時過ぎだった。
先日の渋谷西武の美術画廊に出展していた倉敷安耶(Aya Kurashiki)さんが、WATOWAでまた出展していると聞いていたので見に来たのだが、ただ、お昼ご飯がまだなので、場所だけ確認して近くのラーメン屋に入った。
一番安いシンプルなラーメンを頼むと出てきたのは甘口のラーメン、その味はなかなか珍しくて新鮮だった。


WATOWA GALLERY


WATOWA GALLERY、御村紗也作品


まずはギャラリーの1階から。
おや、この絵は御村紗也(Saya Mimura)さんではないか。
彼女の作品は、先日、渋谷西武の美術画廊で見たことがあるが、透明感のある素敵な絵である。
女性職員に聞くと倉敷さんの作品は2階にあるというので、私は玄関外のらせん階段をのぼった。
2階の展示室に入ると、1人の中年男性が、静かにじっと1枚の絵を眺めている。

おや、彼は確か、、、先ほど1階で女性職員にいろいろ絵の質問をしていた人なのだが、、、ちょうどいい。
お邪魔して悪いが、彼に頼んで、私と倉敷さんの作品との記念写真を撮ってもらおう。


倉敷安耶作品


倉敷安耶作品


「写真、どうもありがとうございます。」
「いえ。」
「あのう、失礼ですが、、、」
「なにか?」
「人違いかもしれませんが、先週あなた、西武の美術画廊にいらっしゃいませんでしたか??」
「えっ!? 確かに、いましたけど、、、」
「やっぱり、同じ方でしたか!!」
「するとあなたも? 西武画廊は、いつだっけなあ、、、展示替えの翌日かな。」
「ええ、その時にお見かけしたと記憶します。」
(派手な絵柄のマスクをさわって)「ああ、もしかして、この派手なマスクのおかげかな。」

その後、いま記念撮影したばかりの倉敷さんの作品の話題になった。

「あの日、私は西武に倉敷さんの絵を見に行ったのです。でも、うっかりして、展示期間を間違えまして。展示替え直後で彼女の絵はありませんでした。」
「それで今日ここに?」
「ええ、まあ、、、」
「あなた、倉敷さんのお知り合いの方ですか??」
「まあ、そうですけど、、、」
「ああ、それじゃ、倉敷さんの絵を見れなくて残念でしたね。」
「いや、実はすでに、こないだお友達と一緒に見に来てまして。だから2度目なのです。」
「な、なるほど。。。アッ、すごい!! この方の絵がグランプリなんですね。」

今回の共同展示会の作品は、ギャラリーの関係者(審査員)の採点によりランキングされており、倉敷さんがトップということを聞いていた。
確かに、彼女の点数が154.5点でトップであった。


倉敷安耶作品


「すみません、今度はあなたのこともお聞かせ願えませんか?」(と私)
「いいですよ。」
「単刀直入に伺います。あなたってアート業界の人?」
「いえ、シロウトです。ふだんは会社員やってます。でも、まあ、休日はいつもギャラリーめぐりをしてますけど。」
「ということはマニアですね。それに、あなたって芸能人みたいにおしゃれだもの。本当は何者ですか?」
「いや~、何者って言われても困るなあ。私は美術評論家でもないし、ただの庶民です。そういうあなたこそ、何者ですか?」
「私もあなたと同じシロウト、ただの庶民です^^」
「本当に?」
「本当です。だいたい今日のお昼ごはんだってね、ラーメン屋で一番安いラーメンを食べてきました。」
「へ~、私もさっきまでそこのオープンカフェで安いサンドイッチを食べてました。」
「ほう。」
「画家の渡辺さんと2人でサンドイッチを食べながらずっと喋ってましたよ。」
「お~、アーティストと一緒に渋谷でランチなんて、あなた、しゃれてますね~。やっぱり、あなた、すごい人なんですね。」
「いや~、まあ、ええと、、、私と一緒にいたのは渡辺涼太さんです。ご存知ないですか??」
「渡辺涼太さん、知らないなあ、、、」
「まだ芸大生ですが、注目の若手アーティストです。あとでストーリーズに、渡辺さんの作品をアップしますから、よかったら見てください。」
「分かりました。ああ、それなら私もインスタをやってるから、名刺交換ではなく、インスタ交換でもいいですか。」

最近はSNSのアカウントがある人どうしなら、名刺交換はせず、SNS交換で済ませている。
あとでインスタで話しましょうということになり、私は彼(Iさん)と別れてギャラリーをあとにした。
そして銀座線の渋谷駅から虎ノ門へ。
外堀通りを歩き、赤い看板の日本酒情報館のビルに入った(2021/12/23「わたしのワインの先生(2)」へ続く)。

2021/12/23

わたしのワインの先生(3)似たものどうし?

おととい私は、渋谷で用事を済ませた後、日本酒をひっかけるため、銀座線で虎ノ門に行った。
虎ノ門の日本酒情報館、外堀通りを少し歩くと日本酒情報館の赤い看板が見える。
夕方からワイン教室があるのだが、、、その前に日本酒をひっかけてからいこうという飲んだくれのプランである。
今からそれを1人で実行に移す。
実は2週間前、西麻布の忘年会で、ワインとワインの間に富山の銘酒「満寿泉(ますいずみ)」が出された。
これが非常においしかったので、なんだか私はワイン講座の前に日本酒をひっかけたくなったのだった。




しかし、飲む前にトイレに行きたくなって、私は店員にトイレの場所を聞いた。
1階には普通のトイレ設備がなく、2階は他社のオフィスである。
いまは新型コロナウィルスの感染リスクがあるためなのか、すぐそこの身障者用のトイレを使ってください、と言われた。
私は情報館の入口の目の前にあるトイレの扉の前に立った。

あれ、おかしいな、、、
大きなドアを何度か押したり引いたりしてみたが開かない。

その場で少し悩んだりしてから、身障者用トイレは車椅子の人のために引き戸だということを思い出し、ようやく中に入れた。

なあんだ、横にあければいいのか、、、汗。

ドアがやや長方形で、横にあけるようには見えなかったのだ。


日本酒情報館


その後、私は情報館に戻り、30分ほどでテイスティンググラスを3つあけ、飲むのを切り上げ、また銀座線に乗り、T先生のワイン教室に行った。
この日はクリスマスシーズン。
特別に、5種類の赤ワインに加え、スティルトン、シュトレン、えびせんのようなものがおまけで付いた。


赤ワインテイスティング


ワイン教室後は、忘年会も兼ねたアフターの飲み会、予約していた日本橋丸善の裏の「cave de ワイン県やまなし」へ。
caveとは洞窟のほかに、ワインの地下貯蔵庫(ワインセラー)の意味もある。
店名のとおり、古い洋館の地下室の雰囲気で、木の扉を開けるとその向こうは、ワインセラーを模したワインショップになっていた。






cave de ワイン県やまなし


ここはご当地レストランで、メニューのワインも食材も山梨県産に限定されている。
ほうとうカルボナーラ、鹿肉ハンバーグなど、山梨のユニークな料理もいくつか出てきたが、サーモンに添えられたイワナのイクラが珍味だった。
ワインについては、ショップで買ったものを持ち込み料1000円で持ち込めるので、スパークリングで乾杯の後、早速、先生と私でワインを選びに行った。
先生は私に、好きなものを選んでいい、という。
だが、私は日本のワインにさほど詳しくないため、マスカットベイリーA以外、地場品種については品種特性がピンとこないのだった。
しかし、さすが先生はワインのプロフェッショナルである。
ラベルを見るだけで次々とコメントと良い悪いを即答していき、私たちはショップの主要な棚を、ものの数分で見事に制覇してしまった。


勝沼、甲州


結局、先生のすすめで、赤はメルロー、白は甲州を選んだ。
そのほかのワインは、店内のワインリストから頼んでいった。
日本のワインは価格負けしているものも多いが、先生が選んだのはどちらも、価格に見合っており、おいしいワインだった。
ああ、やっぱり、先生はすごい人だなあ、、、私は改めて先生を尊敬してしまった。
ただし、ワインを前にするとこれほどまでに頭脳明晰な先生も、ワイン以外のこととなるとかなりの天然キャラなのである。
実は、先ほどのレストランの入口の扉をあけるときもそうだった。
先生は入るときに一生懸命手前に引いていたが、、、正解は引くのではなく、ガラッと開ける引き戸だったので。

なによコレ、横にあければいいのね。

先生の真後ろで私は、目の前の出来事がとても他人事とは思えず、かける言葉が見つからなかったのだが、たぶん先生もドアの形状を見て、まさか横にあけるとは思わなかったのだろう。
しかしそれにしても、この一件から分かるように先生と私は、似たものどうしのような気もするのである。
お酒好きでもお酒には弱い方である。
飲み会では他人より多く飲み食いしないため、いつもワリカン負けをする。
ワイン好きだが甘党で、途中の本格的なワインよりも、最終のアイスワインを飲んで最も満足していたように思う。
また、おでん屋で飲む場合、おでんの具材で最も好きなものは、どろどろのちくわぶ、こんなところまで同じとは。

あら、いやだわ、師匠と弟子というのは、こんなにもよく似るのかしらねえ、、、

まあ、敬愛する師匠と似たものどうしなのは、弟子の私としては、まんざらでもない気分なのだけど。

2021/12/22

私の書いたことが本になるなんて

今日は、金融商品の価格分析の方法(テクニカル分析)の認定資格試験を受けてきた。
正式には、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリストという資格試験である。
試験会場は新御茶ノ水ビル、ここは私の主治医の井上眼科のあるビルであるが、千代田線新御茶ノ水駅直結なので迷いようがない。
ただ念のため、3時間以上早めに自宅を出た。

以上は、2020年1月のブログに書いたことである。

幸運にも私は、この試験に合格できたが、実は11月14日、この試験の上級資格試験を受けてきた。
正式には、国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリストCertified Financial Technician(通称CFTe)という資格試験である。

10~11月の私は、分厚いファイルに自分で作った論文試験問題を100問ほど綴じ込み、これを持ち歩いてひたすら暗記をしていた。
この試験、私にはなじみのない銀行証券業界人向けのマニアックなものである。
論文(小論文)形式なので暗記事項がたくさんあるのだ。

11月14日、大手町で本試験。
電車が止まるとまずいので、試験当日は早めに家を出た。
午前中は、試験会場近くの喫茶店を数件回り、直前の追い込み。


日本橋高島屋、パスカルカフェ




試験では3時間にわたり、ひたすら小論文と投資レポートを書いた。
鉛筆を持つ手が痛くなった。
ああ、疲れた、、、
試験でこんなに気力体力を使ったのは何十年ぶりだ。

そして数日前、ついに合格発表があった。
おそるおそる協会のホームページを見ると、合格者の中に、私の受験番号があった!!
とにかく、無事、合格。
ああ、よかった~~♪♪(*'ω'*)




ところで、もうひとつ、すっかり書き忘れていたことがある。
私が去年末、日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)に寄稿した投資分析の研究論文の話である。
先ほど書いたとおり、去年1月に日本テクニカルアナリスト協会の試験に受かった私は、せっかく資格を取ったのだから記念に1本、何か書きたくなった。
コロナ禍の外出自粛で、論文を書く十分な時間もあった。

3月、協会の論文審査委員長のNさんから連絡があり、5月になると担当編集者からゲラが届いた。
「ゲラチェックをしてください」とあったので、私は最初、「ゲラって何だろう?」と思った。
ここでは、私が書いた論文が作家の原稿にあたるわけだが、ゲラとは作家の担当編集者が起案した編集者版の原稿のことだ。
通常、本や雑誌のフォーマットに従って作られるものなのだが、誤字脱字の修正をしたり、字数制限や段落分けの都合上、編集者が文章に少し手を入れることもある。
そのため、そういったことも含め、内容に問題がないかを作者が最終確認する必要がある。
つまり、ゲラチェックをしてくださいというのは、先生自身で校正してください、ということである。
そしてゲラチェック後は、あとは本になるのを待つだけなのだが、私の場合、そこからが非常に長く、約5ヶ月も待った。
編集部も印刷会社も、新型コロナウィルスによる緊急事態宣言の長期化で、業務が停滞したり、様々な苦労があったようだ。
が、その間、私だって本当に本ができあがるのか心配だったし、うちのママ殿は私よりもそのことを気にしているようだった。

「本はいつできあがるの??」
「編集部に聞いたら、もう少しだって。」
「もう少しもう少しって、あんた、ずっと同じこと言われてるじゃないの。」
「そうだけど、、、」
「あんたの書いた論文が本に載るなんて、話がうますぎるのよ。」
「まあ、そうなんだけど、、、」
「ねえ、それって、うそなんじゃない!?」
「えっ??」
「実は、その編集部は本を作ってるふりをしてるんじゃないの??」
「いや~、さすがにそれはないと思うけど。」
「どうしてよ??」
「「会社四季報」で有名な東洋経済の編集部の人なんだから。そこの編集長が、いま作ってますと言うんだから、間違いないと思うよ。」
「ふ~ん、どうかしら。「会社四季報」なんて知らないわ。」
「・・・・・・・・・」(まあ、ふつうは知らないか)

そんな感じで夏が過ぎ、ようやく先月のこと、高島屋で買い物をして帰宅すると、他の郵便物と一緒に書籍の束(執筆者は多めにもらえる)が家の玄関に置いてあった。




「届いたみたいよ。」
「おお!!」
「あとで見せなさい。それに、何冊もあるなら、、、私も1冊、ほしいわね。」
「まさか読むの??」
「読みません。専門家じゃあるまいし、読んでも分かるわけないでしょ。」
「そ、そうだよね、、、」
「おやつにしましょう。高島屋でどこのケーキ買ってきたの??」
「アンリシャルパンティエのチョコレートケーキ。」
「すぐ紅茶を入れるわ。」

予定よりだいぶ遅れていたから、ママ殿も私も、無事できあがってホッとしたのだった。


アンリシャルパンティエのチョコレートケーキ

2021/12/21

若鶏フライ マリラン風




クリスマスはどんな手料理を作ろうか。思案しましたが、以前日比谷の東京会舘の料理教室で教わった「若鶏フライ マリラン風」を作る予定です。実は意外と簡単に作れます。でも「マリラン風」ですからおしゃれです。




2021/12/19

湯島天神、恒例の終わり詣(2021年)

12月17日は恒例の湯島天神の終わり詣に行った。
本当は幸先詣というそうだが、私はその言葉を知らない頃から勝手に終わり詣といって年末閑散期の参拝を楽しんでいた。
幸先詣との違いは、去年のブログで説明したとおりである。
つまり、来年の幸せ(ご利益)を先に祈願するのが「幸先詣」、私の終わり詣は今年の無事を感謝するためのお詣り、である。


湯島天神


湯島天神


境内は、幸先詣の赤いのぼりを除いてはいつもと変わらぬ落ち着いた雰囲気。
今年も御朱印を書いてもらい、庭園を散歩したが、用事の途中なので早めに門を出た。
例年だと向かいの湯島合同庁舎に行き、敷地内の近現代建築資料館にも立ち寄るのだが、この日は立ち寄らず、上野広小路まで歩いた。
年末の買い物客で、上野広小路の交差点は人通りが多く、失われた日常がだいぶ戻ってきていると感じた。
私は松坂屋の隣のあんみつ屋へ、あんず+クリーム+白玉+あんみつを食べた。
が、スマホを眺めながらのんびり食べていたらクリームがとけてしまい、途中から、あんずとみかんの見分けがつかなくなってしまった。


あんずクリームあんみつ白玉トッピング


食べ終わり、あんみつ屋を出た後は上野広小路駅から銀座線に乗り、地下鉄を乗り継いで麻布十番駅へ。
所用を済ませ、帰りは半蔵門線で三越前駅へ。
時計を見るとまだ16時前。
これから私は半蔵門線から銀座線に乗り換え末広町(秋葉原)に行く予定であるが、その前に、外に出て駅前の福徳神社でおみくじを引きたくなった。
湯島天神でおみくじを引こうと思って忘れていたので、その代わりである。


福徳神社おみくじ


さて、年末の運試しはどうだろうか。
あれ??
でも、これは、、、何たる偶然!!

私はこの日、前回11月のときに引いた十八番をまた引いてしまった。
風が強いのでその場では開封せず、ポケットに入れたまま帰宅したが、家でおみくじを開けると、なんと、なかみの文言まで全部同じなんだけど、、、


福徳神社おみくじ


<今回の大吉>
願望 不安に思うことはあれど後にかなう
仕事 今は控えた方がよい
金運 大きな利益あり
勝負 今は不利、待てば勝ちます
恋愛 長い目で見よ
転居 急がぬ方がよい

これはおみくじ業者の手抜きということではなく、実に興味深いことである。
つまりこれは、11月当時と同様、引き続き「俟つ」べきであるという天の啓示だ。
もっとも、「俟つ」とは、何もせずにじっと待つ、という受け身の意味だけではない。
「俟つ」には、準備を整えるという能動的積極的な側面もある。

今はまだ、急がず、じっくり俟つほうがいい。
そう、何事も。
俟つというのはなかなか難しいものなのである。


塩野七生マキアヴェッリ語録


最後に。
以前引用したマキアヴェッリ語録に、マキアヴェッリのこんな言葉があったので、書き留めておこう。

なにかを為したいと思う者は、まずなによりも先に、準備に専念することが必要だ。機会の訪れを待っての準備開始では、もう遅い。幸運に微笑まれるより前に、準備は整えておかねばならない~好機というものは、すぐさま捕まえないと、逃げ去ってしまうものである(戦略論・塩野七生マキアヴェッリ語録)

2021/12/14

彼女はスターバックスナンバーワン

便りがないのは無事な証拠であるが、忘年会ができるのもまた無事な証拠である。
去年できなかったことが今年できるようになったのだから、世の中も自分も去年よりは進歩しており、その点でも今年は良い年だったと思う方が前向きでいいだろう。
この日は西麻布で忘年会があり、その前に用事が済んだのはお昼過ぎだった。
地下鉄を乗り継ぎ溜池山王駅へ。
朝のコーヒーを飲んでおらず、私はアークヒルズのスターバックスに寄り道をした。
ここはスターバックスリザーヴの店である。
私はレジで、新発売の「ザンビア」のハンドドリップを注文した。
スタバは数ヶ月ぶり、財布の中のいつもの場所にスタバカードが見当たらず、私はあわててスイカで支払った。


スターバックスリザーヴ、ザンビア


アークヒルズスターバックス


店内のインテリアはほとんど変わっていない。
たぶん、ここに来るのは約2年ぶりだ。
サイフォンのあるカウンター席に座ると、私と同年代の女性バリスタ(Kさん)が奥から出てきて、早速ザンビアの説明を始めた。
以前はここで、学生や20代の店員にコーヒーをいれてもらっていた。
私は、ほとんどの人が入れ替わったなあ、と思った。
このバリスタの女性に、コロナ禍のあいだ、何があったのか聞いてみよう。
コーヒーをいれながら、Kさんは私にいろいろと話してくれた。
さて、以前ブログ記事に登場したCさん、彼女はいまどうしているだろう、、、
Cさんとは、3年前私がスターバックスの将来のバリスタチャンピオンと見込んでいた若い女の子のことである。

「Cさんはいますか??」
「彼女はもうここにはいませんよ。彼女はいま、六本木ヒルズの店長です。」
「あ、それって、もしかして、、、」
「はい、栄転です。彼女はいまのスターバックスでナンバーワンのバリスタです。」

私はKさんからCさんの大出世の話を教えてもらった。
詳細はスターバックスのウェブサイトの2021年アンバサダーの紹介記事(リンク)で確認できるが、要するに、私の予測が的中したのである。
私がすごいのではなく、Cさんがすごいのだが、寄り道をして、いい話を聞くことができて、よかった。
3年前、ちゃっかり、サインをもらっておいて大正解!!

その後、溜池山王駅に戻り、南北線で麻布十番駅へ。
私は、駅から歩いてすぐの交差点にある麻布十番パレットギャラリーを訪ねた。


麻布十番パレットギャラリー、島田精治


麻布十番パレットギャラリー、宇野亜喜良


「文学とアートの出逢い」というオシャレな装幀画の共同展示会である。
友達の友達の画家(島田精治さん)が出展しており、散歩がてらに寄って見てはどうか、と言われたので、そうすることにした。
1人1点の展示、小ぢんまりとしたギャラリー、なので管理人の女性と作品や画家の話をしながら間近で見ることができたが、これらの装幀画はオリジナルの装幀画とは異なる画家独自のものである。
私は島田さんとは面識がないので、管理人の女性に島田さんのことを聞いてみた。

「島田先生の作品はユーモアがありますね。やっぱり、ご本人もそういう方なのかな。」
「ええ。いかにも芸術家という感じの純粋で、おもしろい先生ですよ。お会いしたことないんですか??」
「まだ、ないんですよ。」
「つい先ほどまで島田先生、お友達と一緒に在廊されていましたよ。」
「へえ、惜しいな、入れ違いか、、、」

なるほど、もしスタバに寄り道をしていなければ会うことができただろう。
しかし、スタバに寄り道をして、いい話を聞けたので、それほど残念とは思わなかった。
入れ違いはよくあることだし、縁があれば次の機会に会えるだろう。
さて、もうそろそろ出ようかな。
まもなく子供連れの主婦と高齢の男性が入ってきて、管理人の女性が忙しくなり、私はすぐギャラリーを出て西麻布に向かった。
店に最も近い六本木通りの交差点には、予定よりかなり早めに到着したのだが、私はそこから歩いて店の場所を確認し、友達にLineで写真を送り、その後、スマホの充電のため喫茶店に入った。
充電中は電源を切りたいので窓際のカウンター席に座って、暗くなった大通りの様子を眺めたり、手持ちの本を読んだりしてスマホを見ないで過ごした。
そして充電が終わり、スマホの電源を1時間ぶりに入れるとLineの返信が入っていた。

あなたが到着したとき、私はまだ家でくつろいでいたので、時間を間違えて伝えたのではないかとあわててしまいました。

私は、遅刻するのもまずいが、早すぎる到着も考えものだな、と思った。


満寿泉


ブルゴーニュシャルドネ






2021/12/13

続・勝手に座る犬


今日はおれの座布団かよ( ゚Д゚)!!!! きみ、いつのまに出世しとるやんか!? でも、おれの物を私物化するの、やめてくんないかな~??




2021/12/12

勝手に座る犬


あ、ここにあった( ゚Д゚)!!!!! また勝手に、おれの服の上に座っとるな~、着る服がなくてこっちは寒いのに!!




2021/12/02

国籍はく奪条項違憲訴訟(3)控訴審第3回口頭弁論期日

ずいぶん前の話になるが2021年1月21日、東京地裁で国籍剥奪条項違憲訴訟の判決があり、結果は原告の負けだった。
この裁判については下記のようないきさつで見ているのだが、法理論的なことはすでに書いたとおりである。

2020年3月5日に国籍法11条1項の違憲裁判の口頭弁論があり、関係者向けの報告会を初めて聞いた。
私はどういうわけか、この裁判の支援者なのである。
支援の理由は利害関係があるからではない。
また、必ずしも、けしからんとか、かわいそうとか、そういうことを思ったからでもない。
2019年当時、この裁判の原告たちが、キャンプファイヤーのウェブサイトで寄附を募っていたのだが、必要な金額の2~3割程度しか集まっていなかった。
私は募集記事をたまたま見かけたが、重要な憲法訴訟なのに資金不足では、、、と思って少しのお金を出したのだ。
そして募集の締切り直前に、クラシック音楽の師匠Iさんにもこの話をそれとなく伝えたが、その数日後、募集金額以上の資金が集まっていて、不思議なこともあるんだなあと思った。
さて、お金を出すとせっかくなので話も聞きたくなる。
話を聞くと続きが気になる。
事実は小説よりも奇なり、である。
ということで、この裁判に関わる私は、続きが気になる小説の読者のようなものである。
(2020/02/25「国籍はく奪条項違憲訴訟(1) これはいわゆる「レアケース」??)」

弁護団の先生たちは勝てると自信満々に言ってたのだが負けたので、なんだ、話が違うぞ、ハズしたか、と思った。
でもよく考えると、弁護士が負けるかも、などと弱気な発言をするわけがない。
その後、東京高等裁判所で第2審が始まったが、何度か口頭弁論があり、最近新型コロナウィルスのほうもだいぶ落ち着いてきたので、一度裁判を傍聴してみることにした。

11月30日。
裁判は午後3時から。
お昼近くに日比谷駅到着。
駅前のカフェで簡単な昼食。
ミッドタウン日比谷で買い物。
そこから日比谷公園を突っ切って霞が関の官庁街に出た。


日比谷公園


東京高裁の正門前では、不当判決の横断幕を広げたデモ隊がビラ配りをしており、私は彼らを避けるように中へ。
寒いのに、よくやるなあ、、、

しかし、裁判所の中も結構寒いのである。
エレベーターで8階に上がり、法廷の脇の待合室で待った。
堅い木の椅子で、待合室には2人しかいなかった。
2人のうち1人は、ZOOMの報告会で見たことのある弁護団の先生である。
その横には新聞記者が座っていて、2人で訴訟の行方について話していた。

裁判は3時に始まった。
傍聴人は中高年ばかりで15人程度。
事務的なやりとりだけで3時半には終了。
せっかく見に来たのに退屈だと思うかもしれないが、それはテレビドラマの見すぎである。

その後はみんなで報告会の会場へ、徒歩で移動することになった。
初対面なので法廷の外の廊下で自己紹介をしたりして、建物の外へ出た。
そもそも傍聴が抽選ではなく、私は拍子抜けしていたのだが、違憲訴訟なのに、ずいぶんひっそりとしたイベントではないか。
いや、でも、、、それじゃあ、行きに見かけた正面玄関の大行列は、何の裁判の傍聴人たちなのだろう??
職員に聞くと、東京電力に関する裁判といっていた(被告は東電元会長の勝俣恒久氏)。

ああ、そうか。
2011年3月11日の原発事故、あれから10年も経過したんだよなあ。
夏には「東北復興」の象徴としての東京オリンピックが開催されたばかりだが、今もなお東電の裁判は続いており、福島原発の汚染水は流れ出ているのだ。
しかし、世の中には実にいろいろな問題が、あるものだ。
私は寒い風の中を新橋に向かって歩いたが、本当に寒くなった。


国籍法第11条1項違憲訴訟控訴審の報告会

2021/12/01

樋口一葉「たけくらべ」ゆかりの地散歩

浅草の裏手、竜泉地区にある樋口一葉記念館。
その目印は、一葉煎餅の店、お唄と三味線の教室、一葉記念公園の3つである。
11月23日は、5000円札の樋口一葉の命日で、記念館主催の散歩会(ボランティアガイドと行く「たけくらべ」ゆかりの地の散歩会)があった。
おととし初めて申し込んで、抽選に当たったが所用で行けず、去年は新型コロナウィルスのため散歩会が中止、今年こそ、忘れずに申し込んで抽選に当たった。

午前の部の定員は15名。
10時に記念館の研修室に集合したのも15名であった(ということは落選者がいたのだろう)。
研修室で30分ほど「たけくらべ」の解説があり、10時30分に出発し、私たちは5人ずつ3グループに分けられ、それぞれにボランティアガイドの女性と記念館の職員が付いた。
最初に行ったのは千束稲荷。
境内に樋口一葉の記念像があった。


千束稲荷


そこから大通りまで数分歩き、次は大音寺という古くさいお寺の門前に着いた。
門扉を勝手に開けて中へ入り、むろん事前許可はもらっているのだが、私たちは侵入者の一団のようであった。
庭の左手に墓地があり、ボランティアガイドの女性が、大音寺はかつての「投げ込み寺」のひとつで、遊女の無縁仏があると言った。
投げ込み寺とは、当時遊女のほとんどが借金のかたに売られてきた女で、死んだら故郷も墓もないから、遊郭経営者がその遺体を埋葬したお寺のことである。
ああ、そうだ、投げ込み寺というと、以前吉原遊郭街跡の見学ツアーで訪れた吉原弁財天(本宮)と同じなのだな、と私は思った。

大国寺を出ると私たちは大通りの横断歩道を渡り、これまでと反対側の歩道を歩いた。
路上では職人たちが解体作業をしており、まもなく、解体中のやぐらの下をくぐり、少し先の鷲神社(おおとり神社)の境内へ。


鷲神社


11月21日に「二の酉(にのとり)」が終わったばかり、その後片付けで騒がしかった。
境内のすみっこに樋口一葉の記念碑があるというのだが、今はブルーシートに覆われていて見えなかった。
その後、路地側の出口から神社を出て、路地向かいの長国寺にも立ち寄った。
しかし、そこから少し歩くと、にわかに見覚えのある景色になった。
この辺から、だんだん慣れてお互い話すようになり、私はボランティアガイドの女性と並んで話しながら歩いた。

「そこの建物は台東病院です。かつて検査場だったところです。」
「検査場って何ですか??」
「性病検査をするところです。」
「あ、ちょっと待って。あれが台東病院ってことは、もしかしてその先は公園で、横断歩道があって、その向こうに投げ込み寺の吉原弁財天があるんじゃない??」
「あなた、、、この辺りからはお詳しいんですね。」( 一一)
「いやいや、おねえさん、そうじゃないんですよ。以前、吉原遊郭街跡の見学ツアーに参加したことがありまして、その時は、見返り柳から吉原神社、台東病院、吉原弁財天という感じで歩きました。」
「あら、そうなんですね。今日はその反対のコースです。」
「なるほど、よく分かりました。あっちの吉原のお店のある通りに行くと、交差点においらんの高下駄のタバコ屋があって、吉原大門、ガソリンスタンドのところが見返り柳でしょ。」
「そうです、そうです。」


吉原のタバコ屋


配布資料の散歩順路を確認すると、途中からは、私が以前参加した吉原ツアーとほぼ同じで、それを私たちのグループは現在、逆に回っているのだった。

(前回)見返り柳~吉原大門~タバコ屋~吉原神社~台東病院~吉原弁財天~
(今回)樋口一葉記念館~千束稲荷~大音寺~鷲神社~長国寺~台東病院~吉原神社~タバコ屋~吉原大門~見返り柳~樋口一葉記念館

なので、ここから先の話は、以前の吉原ツアーとほぼかぶるので省略する。
ただ、吉原のソープランド街が、前回は平日でシャッター街のようだったのに、この日は祝日のため、ほとんどが朝から営業中であった。

「ずいぶん、にぎやかですね。今日は祝日だから、朝からやってるんですね。」
「あら、いやだ、あそこに黒塗りのベンツがとまってるじゃない。やっぱり、お客さんは、あちらの世界の殿方ばかりなんでしょうか??」
「どうでしょう、今日は祝日で、いわゆる書き入れ時というやつでしょうから、一般客も結構来てるんじゃないですか。」
「か、書き入れ時、、、」

とはいっても、私たちは道を歩きながら、ソープランドに入店する男性客を実際に目撃することはなく、形ばかり栄えている吉原という気もしたが、ようやく最後の見返り柳の交差点に着いた。
そろそろ散歩会も終わりだが、1時間半近く歩き続け、足が疲れた。
ここで私たちは立ち止まり、ガイドの女性が最後の解説をした。


見返り柳


「みなさん、これが有名な見返り柳です。「たけくらべ」の有名な文章を読み上げます。「廻れば大門の見返り柳いと長けれど、お歯ぐろ溝(どぶ)に燈火(ともしび)うつる三階の騒ぎも手に取る如く~」。男性客が遊女に未練して思わず振り返る場所が見返り柳です。でも、本当のところ、よく見ないと柳だとは気付きませんけど。」
「そうそう、ここは石碑がないと分かりにくいですよ。」
「ええ、でも、へんねえ、、、今日の柳、ばかに元気がいいわ。柳に見えるもの。以前は枯れてて柳かどうかも分からなかったのだけれど。」
「確かに、私も去年はそんな記憶がある。」
「何が、あったのかしら、、、」

しかし、ここは大通りの交差点のガソリンスタンドの目の前で、車が頻繁に出入りして危ないので、私たちはすぐその場を離れた。
そして再び住宅街に入り、大黒屋寮跡の近くを通り、12時近くに一葉記念館に戻って解散となった。


一葉記念館


なお、大黒屋というのは、かつてここにあった遊郭である。
樋口一葉の「たけくらべ」は大黒屋の遊女を姉に持つ美少女美登利と、お寺の跡取り息子の信如少年の物語なのである。
ただ私は、読書の秋より食欲の秋なので、浅草の天ぷら屋のことかと思ってガイドの話を聞いていた。

「おねえさん、大黒屋といいますと、私は浅草の天ぷら屋ならよく知っております。あの遊郭は系列店ですか??」
「ぜんぜん違います。」
「あそこ、おいしいですよね~。路地で場所が分かりにくいけど。」
「でも、土手通りの伊勢屋さんもおいしいみたいよ。」
「ああ、あそこ、いつも行列ができてますよね。」
「ランチタイムはきっと安いのよ。」


一葉記念公園石碑


(本文)信如が何時も田町へ通う時、通らでも事は済めども言はば近道の土手手前に、かりそめの格子門、(中略)その一つ構へが大黒屋の寮なり。
(補足)龍華寺の信如は大黒屋の美登利を避けている。その美登利の家の前を通りかかったのは、なぜか。
(本文)信如は今ぞ淋しう見かへれば紅入り友仙の雨にぬれて紅葉の形のうるはしきが我が足ちかく散ぼひたる、そぞろに床しき思ひは有れども、手に取あぐる事をもせず空しう眺めて憂き思ひあり。
(補足)下駄を直すためにと、美登利から投げかけられた紅入りの友仙の端切れ、それを無視する信如、美登利の単純な善意を受け入れられないのは、なぜか。
(散歩会配布資料より)

吉原の遊女を姉に持つ勝気でおきゃんな少女美登利は、豊富な小遣いで子供たちの女王様のような存在だった。対して龍華寺僧侶の息子信如は、俗物的な父を恥じる内向的な少年である。二人は同じ学校に通っているが、運動会の日、美登利が信如にハンカチを差し出したことで皆から囃し立てられる。信如は美登利に邪険な態度をとるようになり、美登利も信如を嫌うようになった。
吉原の子供たちは、鳶の頭の子長吉を中心とした横町組と、金貸しの子正太郎を中心とした表町組に分かれ対立していた。千束神社(千束稲荷神社)の夏祭りの日、美登利ら表町組は幻灯会のため「筆や」に集まる。だが正太郎が帰宅した隙に、横町組は横町に住みながら表町組に入っている三五郎を暴行する。美登利はこれに怒るが、長吉に罵倒され屈辱を受ける。
ある雨の日、用事に出た信如は美登利の家の前で突然下駄の鼻緒が切れて困っていた。美登利は鼻緒をすげる端切れを差し出そうと外に出るが、相手が信如とわかるととっさに身を隠す。信如も美登利に気づくが恥ずかしさから無視する。美登利は恥じらいながらも端切れを信如に向かって投げるが、信如は通りかかった長吉の下駄を借りて去ってしまう。
大鳥神社の三の酉の市の日、正太郎は髪を島田に結い美しく着飾った美登利に声をかける。しかし美登利は悲しげな様子で正太郎を拒絶、以後、他の子供とも遊ばなくなってしまう。ある朝、誰かが家の門に差し入れた水仙の造花を美登利はなぜか懐かしく思い、一輪ざしに飾る。それは信如が僧侶の学校に入った日のことだった。
(Wikipediaより)