2022/03/31

国籍はく奪条項違憲訴訟(4)控訴審第3回口頭弁論期日

ずいぶん前の話になるが2021年1月21日、東京地裁で国籍剥奪条項違憲訴訟の判決があり、結果は原告の負けだった。
この裁判については下記のようないきさつで見ているのだが、法理論的なことはすでに書いたとおりである。

2020年3月5日に国籍法11条1項の違憲裁判の口頭弁論があり、関係者向けの報告会を初めて聞いた。
私はどういうわけか、この裁判の支援者なのである。
支援の理由は利害関係があるからではない。
また、必ずしも、けしからんとか、かわいそうとか、そういうことを思ったからでもない。
2019年当時、この裁判の原告たちが、キャンプファイヤーのウェブサイトで寄附を募っていたのだが、必要な金額の2~3割程度しか集まっていなかった。
私は募集記事をたまたま見かけたが、重要な憲法訴訟なのに資金不足では、、、と思って少しのお金を出したのだ。
そして募集の締切り直前に、クラシック音楽の師匠Iさんにもこの話をそれとなく伝えたが、その数日後、募集金額以上の資金が集まっていて、不思議なこともあるんだなあと思った。
さて、お金を出すとせっかくなので話も聞きたくなる。
話を聞くと続きが気になる。
事実は小説よりも奇なり、である。
ということで、この裁判に関わる私は、続きが気になる小説の読者のようなものである。
(2020/02/25「国籍はく奪条項違憲訴訟(1) これはいわゆる「レアケース」??)」

弁護団の先生たちは勝てると自信満々に言ってたのだが負けたので、なんだ、話が違うぞ、ハズしたか、と思った。
でもよく考えると、弁護士が負けるかも、などと弱気な発言をするわけがない。
その後、東京高等裁判所で第2審が始まったが、何度か口頭弁論があり、最近新型コロナウィルスのほうもだいぶ落ち着いてきたので、一度裁判を傍聴してみることにした。

2022年3月29日。
今回は2回目の傍聴である。
開廷は午後3時。
2時半過ぎに東京高裁に到着し、手荷物検査をして中に入った。


東京高等裁判所


法廷の待合室は堅い木椅子なので、今回は1階ロビーのふかふかのソファーで待ち、3時直前に法廷に入った。
傍聴人は20人以上、前回より少し増えたようだ。
裁判官、書記官、弁護人たちのいつもの退屈なやりとりがあり、私は目をとじてそれを聞いた。
原告にとっては人生の一大事でも、彼らにとっては毎日の何でもない「業務」なのである。

続いて原告弁護団の椎名弁護士が立ち上がり、陳述要旨を読み上げる場面になった。
おや、これって、、、今まで聞いたことのない、新鮮な話のような気がする。
理論的にも分かりやすくて筋が通っているのではないか。

以下、椎名弁護士の陳述要旨の最も重要な部分を引用する。

まず、今回の国籍はく奪条項違憲訴訟で問題となっている日本国籍は、在外邦人選挙権制限違憲訴訟で問題となった「選挙権を行使する権利」の根本に存在するものです。「選挙権を行使する権利」だけでなく、その他の諸人権の根本に存在するものです。したがって、憲法上の重要な権利であるどころか、その根本を構成する、極めて重要な憲法上の地位です(①)。
また、「選挙権を行使する権利」だけでなく、たとえば最高裁判所裁判官の国民審査に参加する権利、日本に帰国する権利、日本での居住の権利、日本での就労等の権利や職業選択の自由、日本での経済活動の自由など、日本国籍を有することによって保障される基本的人権が数多くあります。これらの基本的人権は、日本国籍を剥奪された後に争うことによっては、日本国籍を失った期間に享有し行使できていたはずの権利や自由について、その実質を回復できません(②)。
さらに、奥平康弘氏のエッセイが示したように、生来の日本国籍は個人のアイデンティティの根幹をなすものです。生来の日本国籍が一旦剥奪されてしまうと、アイデンティティの継続性・一貫性が失われ、その実質を事後的に回復することはできません(②)。
今回の訴訟の控訴人7は、スイス国籍取得のための要件を明らかに満たしています。控訴人7のスイス国籍取得を妨げるような事情はありません。そのため、控訴人7がスイス国籍取得を申請した場合、客観的にみてスイス国籍を取得する相当高度の蓋然性があります。
控訴人7はスイス国籍の取得を望み、同時に日本国籍を失うことを何としても避けたいと望んでいます。そのような控訴人7にとって、スイス国籍を取得しても日本国籍を失わない地位にあることの確認を求める今回の訴えは、日本国籍をはく奪されることを防ぐうえで有効な手段です。しかも、現在の訴訟制度には、控訴人7が日本国籍をはく奪されることを防ぐために利用できる訴訟は、今回提起した確認の訴えのほかになく、この訴えは適切な手段です(③)。
以上のとおり、控訴人7は、在外邦人選挙権制限違憲訴訟の最高裁大法廷判決が示した基準を、同訴訟より一層満たしています。
したがって、控訴人7が門前払いされてはなりません。

午後3時からの口頭弁論はいつも30分ほどで終わるのだが、その後は支援者向けの報告会の会場へ移動する。
前回の第2回口頭弁論期日は11月末、その時は虎ノ門の貸会議室まで20分ほど歩いて移動したのだが、めちゃくちゃ寒かった。
今回は裁判所のすぐ裏の弁護士会館。
弁護士会館は霞ヶ関駅に直結しており、これなら帰りもらくちんである。


国籍はく奪条項違憲訴訟報告会


国籍はく奪条項違憲訴訟報告会

2022/03/26

Philippe Pacalet or Vina Cono Sur?

雨の中、ワイン教室にいってきたのだが、その途中、コレド日本橋のABCクッキングに立ち寄った。
最近は丸の内教室に行くことが多く、久しぶりだったが、コレド日本橋教室には最も多く通ってて、知らない先生に、お久しぶりですね、と声をかけられた。
U先生(私の担任)はいますかと聞くと、お昼休憩で離席中です、と言われた。
私はABCクッキングを出てしばらくフロアを散歩することにした。


コレド日本橋


コレド日本橋はトレンドの発信地である。
寄り道をすると様々な発見があり楽しい。
最近だとABCクッキングの隣に、マネードクター(通称マネドク)という高級感のある店舗が入居し、何やら景気がよさそうに見える。
ここは、FP(ファイナンシャルプランナー)のサービスをする急成長中の会社で、1月には支社長と名刺交換をした覚えがあるため知っていた。
おや、あちらの店舗は確か、MARKS&WEBのはずだけど。

「いらっしゃいませ、何かお探しですか??」
「すみません、あの~、ここってMARKS&WEBではなくって??」
「あっ、MARKS&WEBさんはすでにいなくなりましたよ。うちはパーフェクトポーションといって、コスメとアロマのお店です♪♪」
「そうなんですね、失礼しました。」

パーフェクトポーションねえ、、、ファイナルファンタジーのアイテムみたいな名前だな。
しかし、コスメキッチンはあるのに、MARKS&WEBがいなくなるなんて。
その後、すぐそばの日本橋高島屋へ。


黒澤文庫、レトロ喫茶店


新館に黒澤文庫というレトロ喫茶店ができた。
何度か行ったが、東北地方の店が東京に初めて進出してきた第一号店で、まだあまり知られていない。
茶褐色の看板には「本と珈琲とインクの匂い」と書かれていて、店員は印刷工のような灰色の制服を着ている。
古本が並ぶカウンター席。
コーヒーを飲みながら好きな本を読み、続きが読みたければ100円払って本のお持ち帰りができる。
ただ残念ながら、この日は座ったところに読みたい本がなかった。
もしよかったら、店内の壁に「あんみつ先生のエッセイブログ」のQRコードでも貼り付けてほしいんだけど。


東京クリエイティブサロン2022


東京クリエイティブサロン2022


夕方になり、八重洲のシャングリラホテルの向かいのパソナのビルへ。
ビルのフロントヤードでは、「東京クリエイティブサロン2022」というブースがあり、何かのアートイベントをしていた。
この寒さとこの雨の中、外でよくやるなあ、と思ったが、入って出るだけのようなので、少しの間、のぞいてみた。
その後、ワイン教室に到着。
例のピュリニーモンラッシェのマダムから、遅刻かも、というLINEが入っていた。
教室にはAさんが座っている。
Aさんはクラシックコンサートのプロモーターで、シプリアンカツアリス(Cyprien Katsaris)のコンサートの案内をもらった。
カツアリスというと2018年夏、横浜のみなとみらいホールで一度聞いたことがある。
鍵盤の魔術師ともいわれる技巧派で、アンコールなどでは変幻自在の即興演奏を披露する変わり者のピアニストである。
今回のコンサートは、葛飾アイリスホール(かつしかシンフォニーヒルズアイリスホール)なので、かなりの近場である(リンク)。


シプリアンカツアリス、ピアノコンサート


T先生が入ってきた。
この日のテーマは、新しいスタイルのワインについて。
オーガニックワイン、ビオディナミワイン、ヴィーガンワイン、オレンジワイン、低アルコールワイン、ノンアルコールワインなどなど、最近ワインのスタイルは多様化している。
T先生の講座は少数精鋭、WSET3以上を想定した内容で、レベルも高いが、オーガニックワインとビオディナミワインはナチュラルワインの括りで、2020年3月に定められたINAOのルールによればその定義はどうのこうの。
う~ん、確かに、両者の違いはなかなか分かりにくい。

「ビオ・ワインとは出来る限り自然のままの製法で作られたワインであり、 自然派ワイン、ヴァン・ナチュール(仏:Vin Naturel、英:Natural Wine)とも呼ばれる。原料となるブドウは、農薬や化学肥料が使用されない有機農法で育成されることが前提となり、 醸造過程においても後述する様々な条件が求められる[1]。これらの条件を満たし、更にスピリチュアルな要素の強いバイオダイナミック農法が応用されたワインはビオディナミ(仏:Vin biodynamique)と呼ばれる。逆に、有機農法を採用していても醸造過程で何らかの添加が行われたり、調整が加えられるものはオーガニックワインとなる。」

「ビオディナミワインとは、ドイツの思想家ルドルフ・シュタイナーが提唱した、「土壌が本来持つエネルギーと自然界に存在する力で農作物の生命力を高める」という考え方に基づいた、「ビオディナミ農法」で造られたワインのことを指します。ビオディナミは「生体力学」という意味で、化学的な農薬と肥料を使わず、天体の動きとの調和、動物との共生、独自の調合剤の使用を特徴としています~(中略)~ビオディナミワインでは、ビオロジック(有機栽培)に加え、「自然由来の物質を使った特別な肥料を使う」「天体の運行に合わせた栽培を行う」という条件がさらに加わります~(中略)~ビオディナミ農法の認証を行っている推進団体「Demeter(デメテール)」が指導・認証したルールに基づいて栽培・醸造されます~中略~ビオディナミワインで使用される肥料は、たとえば牛の糞やタンポポなどです。牛の角や腸に詰め、一定期間を土の中で寝かせたものが良い肥料となります。」

ということなのである。


WSETワイン講座


さて、テイスティングの時間となった。
白3つ、赤2つ。
白3つはシャルドネで、赤はどちらもピノノワール、それはすぐ判別できたのだが、講座のテーマが新しいスタイルのワインということで、どのワインがどう新しいのかを見極めなければならないと、先生に課題を出された。
しかし、そこは非常に難しい判断だ。
なぜなら、製造過程の様々な違いにより、伝統的なスタイルとは異なった仕上がりとなるからである。
そのうち私は、左から2番目と3番目がシャルドネではなく甲州のようにも思えてきた。
すると誰かが、白は全て甲州ではないかと言うので、やっぱりそうかしら、と思ったら、先生いわく、全てシャルドネです。
亜硫酸塩無添加、サスティナブル農法などで、シャルドネが甲州っぽい仕上がりとなったようだ。


WSETワイン講座


続いては赤の方。
4番目は高価格帯のブルゴーニュと思った。
5番目は同じピノでもやけにクリアーで抜けるような感じのテイストで、こちらはオーガニックの中~高級品、とすればニューワールド、チリだと思った。
これは当たりだろう。
答え合わせの時間まで、どちらの赤もおいしいのでちびちび飲んでしまった。
先生が採決をとる。
すると、全員、私と同意見。
しかし、先生いわく、4番がチリのカサブランカヴァレー(Vina Cono Sur、ヴィーニャコノスル)、5番がブルゴーニュのニュイサンジョルジュ(Philippe Pacalet、フィリップパカレ)です。

(一同)ええっ、逆なの~??

これには驚いた。
が、配布された解説を読むと、なるほど、そういうことか、、、Vina Cono Surはフランスのオーク樽で長期熟成されており、Philippe Pacaletはオーガニックで作られたものだった。
講座が終了して片付けの後、帰ろうとする先生に私は声をかけた。
先生、これって、ひっかけ問題ですよね、と私が口をとがらせて言うと、先生は、とぼけた顔をして遠くを見つめた。
そして先生は、教科書を両手で抱えたまま、さっと事務室に消えてしまったのだった。

2022/03/18

倉敷安耶さんの「私たちは家族」に、プーチンとバイデンが座った場合

この日の予定は、松戸⇒飯田橋⇒護国寺⇒駒込。
去年夏BNAWALLで壁画を見たことのある倉敷安耶(くらしきあーや、Aya Kurashiki)さんの作品を見る予定を2つ入れた。
1つ目は松戸の宮ノ越地下道の壁画である。
松戸駅東口から徒歩5分ほど、松戸市民会館から線路方向に住宅街を歩くと、宮ノ越地下歩道の入口がある。
ここは壁画スポットとして知られており、いくつものアーティストのカラフルな壁画が楽しめる。
倉敷さんの壁画が最新作で、そのタイトルは「獅子と牡丹」。




昼過ぎに到着し、私は地下歩道で動画を撮影したり、20分ばかり過ごした。
主婦や学生の自転車が絶えず往来し、地下道は彼らの話し声が響いたりしてにぎやかであった。
彼らは私とは違い、壁画の前を、自転車を押してただ通り過ぎるだけであるが、街中に当たり前にアートがあり溶け込んでいるということが重要で、通り過ぎる=気にしていない、ということではない。
もう見ている、知っているから通り過ぎるのであって、まあ、何というか、テレビで流れるコカコーラのCMを聞き流すのと同じようなもの。
アーティストの利益になるかどうかは別として、恐らく、アートのあり方としては、これはひとつの理想形だと思った。

その後、所用があり、上野広小路経由で飯田橋へ出た。
ホテルのパティスリーで贈答品を買ったついでに、カフェオレとシュークリームのセットを食べて休んだ。
最近洋菓子店を開業する予定のパティシエのNさんに、LINEで話すと、ザクザクした食感のはクッキーシューというそうで、その作り方の一部を教えてくれた。


シュークリームとカフェオレセット


所用が済んだのは夕方。
護国寺駅から地下鉄を乗り継ぎ、駒込駅に着いたのは5時過ぎになってしまった。
駅改札を出て線路沿いの坂道を下ると、路地に駒込倉庫という小さなギャラリーがある。
6人の若手アーティストの共同展示会をしており、6人のうちの1人が倉敷安耶さん。
ただ、倉敷さんは転写作品ではなく、家具を展示しているという。
駒込倉庫の中へ。
展示案内を読みながら作品を見て歩くと、私なりに何となく展示会の趣旨が見えてきた。


駒込倉庫


駒込倉庫1階


倉庫の名にふさわしい急階段を上がり、2階の細長い部屋へ。
入口の受付で職員に記帳を促されたので、私はしぶしぶ名前を書いて部屋の中央へ。
大型テレビに東南アジアの繁華街の記録映像が流れていたが、これはちょっと、銀座の資生堂ギャラリーっぽい感じがした。
さらに進み、部屋の一番奥へ。
窓際の白いカーテン、そばに西洋家具がおいてあり、これがトリの作品のようだ。


駒込倉庫2階、倉敷安耶、わたしたちは家族


駒込倉庫2階、倉敷安耶、わたしたちは家族


鏡の前の椅子に、帽子とメガネとマスク姿の小柄な女の子が座っていた。
が、まもなく立ち上がり別の場所へ行き、私の番になった。
ただ、近付くとどうもこの家具は古くさくて、誰かの遺品のようにも思えた。
なので私は座る気にはなれず、あちこち観察した後、鏡に向かって何枚か記念写真を撮った。
ほかにも鏡が何点か展示されている。
何かが転写された鏡もある。
鏡を使った素敵な展示というと、菅実花さんを思い出すが(2021年資生堂ギャラリー「仮想の嘘か」)、どういう意図の作品なのかしら。
以下は私の独断と偏見によるものなのであしからず。

倉敷安耶さんのこの作品は「私たちは家族」というタイトルで、3人で座って食べながら話せるようになっている。
展示の最終地点にあるのは、私たちにとって対話が最重要かつ最後の手段という示唆だろう。
この場所に座れば、たとえプーチンとバイデンでも家族のように仲良くなる。
ただし、よく見ると左右に飲み物は2人分あっても、お皿は1つだけだから、お皿の中の肉は共有で、お肉の分け方をめぐり2人の大統領の喧嘩が始まる。
するとそこに、作者の倉敷さんが白いカーテンの陰から静かにあらわれ、無愛想な態度で鏡の前に着席する。
大統領たちは何事かと顔を見合わせ喧嘩を中断する。
彼女は落ち着いた声で、「まあまあ、じいさんたち落ち着いて、カルシウムが足りない(`・ω・´)」などといい、2人が仲良くできるよう、ナイフとフォークでお肉を半分ずつに切り分ける。
そして2人に対し順番に、「はい、アーンして(*'ω'*) 入れ歯じゃん、ステキ♪♪」などといって、優しく食べさせてくれる。
こうなるともはや感激で、2人の男たちは目前の相手と仲良く、かたく、握手せざるを得ない。
かくして第三次世界大戦前夜、その危機は彼女のおかげで間一髪去ることとなるが、彼女が登場するときのBGMは、私の大好きな竹内まりやの「けんかをやめて」がよさそうだ。


2022/03/15

モンテマーレの室龍之介オーナーに開業祝のプレゼントをお渡ししてきました

モンテマーレ、佐貫、竜ケ崎


きのう、モンテマーレの室龍之介オーナーに開業祝のプレゼントをお渡ししてきました。コロナ禍のオープン、広くておしゃれな店内、たくさんのお酒と美人の店員さん。なかなかア
グレッシブな生き方、良いと思います♪♪

以下、追記。
初めてランチタイムに手打ちパスタセット(ワイン飲み放題付き)を食べてきました。
うん、なかなか、おいしかった(*'ω'*)!!!


モンテマーレ、佐貫、竜ケ崎


モンテマーレ、佐貫、竜ケ崎




2022/03/14

護国寺の桜と山口藍「山あいの歌」

週末、ミヅマアートギャラリーで、山口藍さんの展示会(山あいの歌)を見てきた。
いつもは何かの用事のついでだが、この日は護国寺に行く以外、特に用事はなかった。
実は今回の山口藍さんも、アート友達Iさんのおすすめである。
いつもはクールな彼が、ぼくは山口藍さんが大好きなんです、などと熱っぽくいうので、それなら自分も見てやろうと思った。

飯田橋駅の神楽坂下の交差点から市ヶ谷方面へ歩いて10分ほど。
外濠の向こうに見える高層ビルは法政大学の校舎である。
東京理科大の前を通り過ぎる。
すると、以前食べたことのあるイタリアンレストランを見つけた。
おお、ここは確か3年前、アンスティチュフランセ(フランス語の教室)で知り合ったおばあちゃんと一緒に、気まぐれな食事会をしたところだ。

「ねえねえ、お兄さん、まだ講演が始まるまで30分以上あるじゃない。」
「そうですね。」
「これからお兄さんも隣のレストランに一緒に食べに行かない?」
「え~、いいんですかあ。私のような怪しい男をナンパするなんて勇気がありますね。」
「いいのよ、私たちはどうせ取られるものなんてありゃしないんだから。」
「なるほど、分かりました。ご一緒します。」
(2019/06/03「私のような怪しい男をナンパするなんて」)

とまあ、こんな感じで食べにいった店なのだ。
そこから歩いて数分、倉庫のような建物の2階がミヅマアートギャラリー、今年早くも3度目の訪問である。
この日は30分ほどかけ、ゆっくりと見ることができた。
いつもの女性職員Mさんは不在で、別の女性が対応したが、彼女の話だと山口さんが個展をするのは数年ぶりとのこと。
作品に描かれた女性はみな慎み深く上品で、心惹かれるものがあった。
杉戸の絵は彼女の新作で、黒猫のものと白猫のものがあり、女性職員の話だと、この杉戸は寺社のものではなく、松濤(渋谷bunnkamuraの向こうの高級住宅街)のお屋敷を取り壊した時に得たものだという。
松濤のお屋敷ねえ、、、


山口藍、ミヅマアートギャラリー


山口藍、ミヅマアートギャラリー


古い杉戸に描かれた新作《せつが恵とき》は、「雪(山口の愛猫)が絵解き」の意で、北斎の「姥がゑとき」から名付けられました。百人一首に詠まれた歌意を乳母がわかりやすく子供に説明するという趣旨で制作されましたが、北斎ならではの難解な絵図が版元の意向に沿わず途中で断念したとされる北斎晩年期の錦絵の連作です。杉戸の端には女の子が猫と共に横たわり、静かな余韻を感じさせる画面には百人一首に編まれた全首が描かれています。和歌の筆の運びが着物の襞や柄へと繋がり、女の子の髪の毛が文字へと流れていくように、耳で聞けば目には見えない和歌の一文字一文字が、空間の気の流れを変えているような緊張感を携えます。
(山口藍「山あいの歌」展示会資料より)

私は、横たわる少女よりも、色違いの2匹の猫に興味を持った。
猫って無愛想で、あんまりかわいくない、、、
ブログの読者はご存知かと思うが、私は犬好きなのである!!

それにしても、百人一首の歌人たちは、うらやましいところに座っている。
私は、むかし読んだドラえもんのマンガを思い出した。
スモールライトか何かで小さくなったのび太君が、散歩中のしずかちゃんのスカートのポケットに潜り込むのだが、しずかちゃんは帰宅してそのまま脱衣所へ、お風呂に入ろうとする、というようなくだりである。


護国寺


さて、ミヅマギャラリーを出た私は、飯田橋駅に戻り、有楽町線で護国寺へ。
護国寺の正門を潜ったのは4時過ぎ。
しかし参拝時間は4時までで、境内には着物姿の女性も歩いておらず、坂道の方ではお茶会もしておらず、実に静まり返っていた。
私は霊園へ向かったが、その途中、本堂の裏手を通りかかったときに、身なりのよい若い男性を見かけた。
へえ、スーツ姿なんて珍しい、仕事の合間に、お墓参りかな??
と思ったら、彼は本堂の横の薬師堂で神頼みを始めた。
ほかにも何人かの男女が、神頼みをして境内を歩いているようだ。


護国寺


護国寺


そろそろ桜の季節である。
戦争と桜、「散る」という言葉が思い浮かんだが、しばらく桜を探して境内を散歩してから霊園に入った。
桜は徐々に咲き始めておりきれいだが、、、あそこにいる2人組の女の子、今度こそ、お墓参りかな??
いや、彼女たちは墓石の前ではしゃいでいて、スマホをかざして墓石の向こうの桜を記念撮影しているだけだ。
な、なるほど、、、撮影してもいいのだな。
これまで墓地で写真を撮るのは気が引けていたが、彼女たちを見て気が変わり、私は試しに鹿鳴館の建築家ジョサイアコンドルの墓石を撮ってみた。
さらに歩くと木々の繁る荘厳な墓地があるのだが、、、

おや、木の上にある白黒の毛皮のようなもの、あれは何だろう??
パンダ模様の野良猫さん、、、ですよね。


護国寺、ジョサイアコンドル墓地


護国寺


木の上の野良猫は遠くの空を見ている。
敷地に足を踏み入れるとその猫がこちらを見た。
私は少しの間、猫を見上げたが、警戒している感じではない。
よく「犬は人に付き、猫は家に付く」と言われる。
飼主がいなくなっても猫は同じ場所にとどまるということだから、死んだ飼主を追いかけて墓地へ迷い込む猫などいるまい。
それにしても、墓地の木の上でぼんやり遠くを見るこの野良猫、空は薄暗くて何となく不吉な存在にも見える。
ただ、それは何かと心配性の私個人の問題で、夕暮れ時の墓地にいるとそのような暗示にかかりやすいということなのだ。
野良猫はただそこにいるだけ。
のんびりとくつろいでいるだけ。
猫はきっと、墓地の方が静かで心が落ち着くといいたいだろう。

霊園を出たのは6時近く。
帰り道は裏道から正門に向かったが、途中の身代わり地蔵、一言地蔵尊、六地蔵の前では、先ほど見かけた数人の男女がまだ神頼みをしていた。

今の世の中は大変な事態に陥っており、それはまさに立ちはだかる山と山の間にいるかのようだ。私もその一人ではあるが足掻きながらも有難いことにこうして日々制作できている。禍によりたくさんの人が夢や希望が断ち切られそうなこの世の中で今をどう過ごせばいいのか悩み、物理的に孤立したことによりそれぞれ募らせる思いが大きくなり、孤立させられたその居場所で叫んでいるように感じている。つまり、今居る場所がそれぞれの山間とするならば、私はここで山あいの歌を響かせようと思う。
(山口藍「山あいの歌」展示会資料より)

2022/03/13

また犬不足





ここ数ヶ月、オミクロン株の影響で姪っ子もワンコも来ず、犬不足です。しかしもうすぐ春休みなので再会の見込みです(^^)♪♪




2022/03/09

六本木ヒルズ、奥田雄太&佐藤明日香の2つの展示会

先週末、私はインタビュー取材を受けた。
しかし、このインタビュー取材というもの、受ければ分かるのだがなかなかのクセモノ。
講師なら2時間好き勝手に喋ればいいので私は気が楽である。
しかし、インタビューとなるとそうはいかない。
なぜなら、相手とのキャッチボール(会話)があるからである。
つまりインタビューでは相手の話を聞きながら自分の話を用意する必要もあるわけだが、この2つを同時並行でおこなうのは、慣れないと案外むずかしい。

さて、インタビューは夜なので、昼間は六本木ヒルズなどにもいってきた。
去年末、私は銀座の石川画廊で奥田雄太さんの個展を見た。
私は奥田さんの絵を直感的にイイと思っており、もう1回見たいと思っていたのだが、数日前ミヅマアートギャラリーからメールが届き、今度は六本木ヒルズで個展を開くことを知った。
森美術館の入口(3階)にミュージアムショップがある。
その右手奥に白い扉の小さな展示室があるのだが、そこが展示会場の「六本木ヒルズA/Dギャラリー」である。
この日は初日で、開館30分前なのに10~15人ほどが並んでおり、私はその列のうしろについた。


六本木ヒルズギャラリー、奥田雄太展示会


六本木ヒルズギャラリー、奥田雄太展示会


実は、奥田さんはかなりの売れっ子なのである。
ただ、少し待てば入れると思ったが残念、いまはコロナ禍で入場制限中、おまけに初日は買う気の客も何人かいて、前に進まない。
私はこの後の予定があったので、あきらめて帰ることにした。

しかし、待っているあいだにちょっとした発見もあった。
ショップの一角を間借りするような形で、佐藤明日香さんのドローイングの展示会も同時開催されていたのだが、こちらはまったく誰も興味を示さないので、私は少々気の毒に思った。
私はあえてじっくり佐藤明日香さんの作品を見てみた。
こういう偶然の出会いはおもしろいものである。
この場合「判官びいき」のようなものだが、佐藤明日香さんのドローイングは奥田さんとは対照的な作風で、派手さや華麗さはないが、服や雑貨のデザイン(例えばネクタイなど)には合っていると思った。


六本木ヒルズギャラリー、佐藤明日香


六本木ヒルズギャラリー、佐藤明日香


六本木ヒルズギャラリー、佐藤明日香


先ほどの話に戻ろう。
撮影終了後、ごほうびに、人形町今半のお弁当をもらった。
私はふだん弁当を食べつけないのだが、今半の弁当はおいしかった。
私がおいしいと言うと、インタビュアーのHさん(証券会社のアナリスト)が、ぼそっと言った。

「それ、ぼくのランチ1週間分です。」
「え、本当に??」
「本当ですよ。」
「差し支えなければ、Hさんのランチ代、おいくらくらいなのですか??」
「ぼくのランチ代はね~、もうずいぶん長いけど、500円です。」
「な、なるほど、、、」(ということは今半の弁当は2500円くらいかな)


人形町今半弁当


人形町今半弁当


しかし、昔話を聞くと、1980年代の日本株バブルでは金融マンがランチタイムにお寿司やうな重を食べるのは当たり前だったそうである。
まあ、会社員が、今半の弁当どころか、そんな豪華なものを自腹で食べていたら、それは正真正銘バブルに違いない。
ただ、このランチの話題を聞いて思ったことがある。
それは、アベノミクスから始まった2010年代の日本株バブルが、主として日本経済のファンダメンタルズの成長よりも、日銀の金融緩和の影響によるものだった、ということである。
去年日経平均株価が3万円を突破して盛り上がったが、その後はどうも株価も景気も低迷期に入ってしまった。

現に相場の当事者たちも、当時お寿司やうな重だったのに今はこうして500円ランチの日々。
この相場の上昇の原因は、もしかすると日本人の節約による節約もあるのではないか??
だとすれば、株価が上昇しても街角景気がよくならないのを不思議がる論者もいるけれども、むしろその方が理屈に合っていることになる!!
そして最近は、コロナと戦争、原油高と円安である。
コストプッシュインフレが現実化しつつあり、街角景気がさらに悪化してきている。
そういうわけで、金融関係の人たちはいま、なじみのチェーン店の500円ランチが値上げされるリスクを恐れているのかもしれない。

2022/03/07

危機の時こそ良き出逢いがある

 


いい時に出逢った人とは案外進展しない場合が多いと思います。いい時を共有しても絆のようなものが生まれないからでは。相田みつをによると、危機の時こそ良き出逢いがあるそうです。コロナ禍の出逢いの中にこそ運命の出逢いがあるのかもしれません♪♪