2019/08/24

湯島天神の恋みくじ

今夜は上野広小路で、例の岩下志麻似の劇団員Rさんと会う約束をしている。
最近、台湾旅行に行ってきたというので、そのおみやげをもらうためである。
昼間の予定はいつものように美術館であるが、今日は丸の内の三菱一号美術館で、「マリアノフォルチュニ展」を見た。


三菱一号美術館「マリアノフォルチューニ」展示会


マリアノフォルチュニ??
聞いたことのない名前だな、誰だろう、、、

マリアノフォルチュニ(Mariano Fortuny y Madrazo)はスペインの画家兼デザイナーである。
母は裕福な貴族、父は有名な画家であった。
父も同じ名前、つまり、マリアノフォルチュニ(Mariano Fortuny y Marsal)である。
息子は父と同じ画家を目指したが、むしろ「デルフォス」のデザイナーとして一世を風靡したことで知られる。
デルフォスとは、まあ簡単に言うと、ゆるめのサテンのドレスである。
父はパリで活躍したオリエント画の大画家で、当時のパリのモードにアジアのトレンドを持ち込んだ最初の人物とも言われる。
これに対して息子は、フランスではなく「イタリア」に、絵画ではなく「ファッション」に、父と同様アジアのトレンドを持ち込んだ最初の人物、というふうに理解するのが妥当かな、と思う。
彼は日本の染付をイタリアに輸入した。
中東の文化芸術にも造詣が深く、彼のデザインした服にその影響がある。
また、ワーグナーの熱烈なファンでもあり、ワーグナーのオペラの舞台演出を手がけている。
いくつもの特許を保有する発明家でもあったし、女性のヌード写真などを撮る写真家でもあった。

なるほど、マリアノフォルチュニはそれほど有名ではないと思うが、私にはその理由が何となく分かった。
どうも彼は母の財産と父の才能を存分に生かし、テキトーにマルチに、やりたい放題やっていたようなのである。
これだと常に偉大な父と比較されてしまうし、芸術的価値に関わらず損な立場である。

私は三菱一号美術館を出た。
まだ待ち合わせまで時間があるので、丸の内から日比谷公園まで散歩した。
帝国ホテルに入り、ママ殿に頼まれたパンとチョコレートを「ガルガンチュア」で買った。
そもそも丸の内は、以前から三菱財閥のお庭(領地)なのであった。
三菱一号美術館は旧三菱財閥本社であるし、その向かいには三菱重工の本社がある。
丸の内から日比谷公園まで皇居沿いを歩けば分かるのだが、三菱財閥が最も格上(上等)の領地を持っている。
日比谷公園まで行くと、日比谷ミッドタウンと帝国ホテルがある。
この辺りは三井財閥の領地。
そして、そのあいだが渋沢財閥の領地、東京會舘と帝劇、ここには私がよく行くお気に入りの出光美術館などもある。
こういうふうに見ると、どの会社がどの財閥と関係が近いのか、イメージもできるだろう。
例えば帝国ホテルは、会社四季報によれば三井不動産が大株主で、三井系の大株主がほぼ過半数を占めている。
もっとも、帝国ホテルの設立発起人には渋沢栄一もいたのであるが。


湯島天神


湯島天神


待ち合わせの時間が近づき、私は帝国ホテルの「ガルガンチュア」でパンとチョコレートを買い、日比谷駅から千代田線で湯島駅に行き、時間まで湯島天神を参拝した。
お詣りをした後は、いつものように湯島天神の恋みくじを引いた。


湯島天神の恋みくじ


湯島天神の恋みくじ


私はお詣りのとき、お賽銭を5円か10円しか入れないので、何となく100円か200円でおみくじも引く習慣がある。
時間になったので、上野松坂屋の隣のビルの「あんみつみはし」に行った。
私の方が先着で、白玉ぜんざいを食べながら彼女を待った。


あんみつみはしの白玉ぜんざい


私の予想通り、彼女はラフな身なりで遅刻をした。
劇団員の彼女は、いつもこんな感じである。
彼女は去年、都内の小劇場で準主役として舞台に出ていた。
私はその舞台を見ていて彼女の才能に注目したのだが、小劇場なので話す機会があり、仲良くなれた。
劇団員はお給料なんてないも同然、なので彼女はバイトをしながら親友と一緒に暮らしている。
とはいえ、彼女は明治大学文学部出身の本格派なのである。
歌舞伎のセリフ回しを理解し、歌舞伎を「堪能できる」というのもすごいが、実家に帰れば地元でも有名なお嬢様である。
お嬢様育ちだから、彼女は身なりをあまり気にすることもなく、いつも女王様気取りの態度なのである。
私は彼女に貢ぎ物としてガルガンチュアのチョコレートを1つ差し出した。
すると、彼女は私に台湾旅行のおみやげをくれた。


台湾茶


「こ、これは、、、台湾のかまぼこですかね??」
「違うわよッ!! これは台湾茶。これ、すごいの。1パックで何度も飲めるのよ。」
「出がらしですよね、何度も飲むということは。」
「違うわよ。日本茶と違って2度目もすごくおいしいの。」
「ふ~ん、、、」

まあ、しかし、彼女は「だめな娘」で、私は「だめな息子」、2人仲良くおいしい出がらしを飲むのもよいかもしれないなあ、と思った。
彼女はにこにこ笑っている。
湯島天神の恋みくじは、家に帰ってから開けることにしよう。