2018/12/31

書斎の肥やし「概論日本のベンチャーキャピタル」「ベンチャーキャピタルの実態と戦略」を読む



先日、書斎の整理中に、こんな本を発見した。
5年ほど前に買った本だが、10年以上前に書かれた本である。
この2冊は、ベンチャーキャピタル(VC)についての解説書である。

世の中、日々進歩があるようで、実はない。
モノは進化しても人間は進歩などしないからだ。
アカデミックの世界では、新しい本よりも古い本が本質を突いており、いまだに参考とされることが多いのも、そういうことなんだと思う。

私は、おやつを食べながら熟読した。
肉まんを食べながら、「ベンチャーキャピタルの実態と戦略」の方をまず読んでみると、次のような指摘があり、なるほど、と思った。

~前略~「若い中小企業のための今日のシステムに問題があることは間違いない」と彼は語った。クラシックベンチャーキャピタルが経済全体にとって生みの母であり、通商委員会の調査によると、第二次世界大戦後に行われた画期的な全イノベーションの95%は、大企業ではなく、むしろ設立間もない中小企業が起こしたものであった。新規参入なくしては、いかなる経済も長期的下降を避けられない運命にある。1945年以降、旧ソ連と東ドイツが陥った第三世界の国々と変わらぬ経済衰退は、両国が成長企業の保護、育成努力を怠ったことがその要因の一つであることは疑う余地もない。
(「ベンチャーキャピタルの実態と戦略」P70~71)

今日において、多くのベンチャーキャピタル(VC)は、投資先のベンチャー企業(VB)に対して経営支援も同時に行っている。
もちろん、運用成績を高めるため、投資先の成長と上場確率をより高めるためである。
上場企業や社歴の長い中小企業とは異なり、VBの経営基盤は脆弱である。
そのため、お金だけを出してぼーっと眺めている、という上場株式のバイアンドホールドのような投資戦略はまずい、ということだと思う。

中には経営支援をしないVCもあるようだが、一般論として、VCはVBに積極的な経営支援をする必要があるといえよう。
VCにとって、まずは投資案件の選別が重要であることは言うまでもないが、経営支援もまた重要のはず、である。
通常、VBに取締役を送り込んで、いろいろ経営支援をするとあるが、それは内情をよく知るVC(たいていは「リードインベスター」)が行うとのことだ。

私は、肉まんを食べ終え、今度はあんまんを食べながら読み進めた。

~前略~それ以外のVCは、オブザベーションライト(投資契約に盛り込まれる経営を監視する権利)に基づき「監視の必要性あり」と判断された場合に限り支援を行うのが通例である。つまり、リードインベスター以外のVCは、さしたる経営支援を行っていないのである。投資案件の規模にもよるが、リードインベスターには力のあるVCが就くのが習慣化しており、弱小VCとの間で役割分担が明確になっている。
(「概論日本のベンチャーキャピタル」P260)

具体的な経営支援の内容となると、「販路開拓支援」「技術などの提携先の紹介」「人材紹介」「金融機関の紹介」が中心であり、ハンズオンを象徴するような「役員の派遣」や「財務、経理支援」などは相対的に比率が低くなっている。
(「概論日本のベンチャーキャピタル」P84~85)

~前略~このとき必要とされる能力は、投資先VBを経営者と一緒になって経営していく起業家的な資質である。すなわち、VCは投資家から集めた資金の運用を行うファンドマネージャーとしての機能と、VBの支援者もしくは支援にとどまらず、VB経営者と共に歩む起業家的な機能を併せ持っている。この二つの機能をビジネスの枠組みの中で実現したのがVCのビジネスモデルなのである。
(「概論日本のベンチャーキャピタル」P30)

しかし、日本の場合、VCがサラリーマン化している、というモンダイが、本書で繰り返し指摘されていた。
例えば金融機関系のVCであれば、そこのベンチャーキャピタリストは親会社からの出向だったりするそうだ。
以下、現実的な問題としてこんな指摘があった。

~前略~取締役となったベンチャーキャピタリストの 60~70%は、業界のことを何も理解せず、企業経営の経験すら持たず、機能していないとさえ思われる。ベンチャーキャピタルが現在価値曲線や財務理論に詳しいMITのMBA取得者を経験のために取締役としてやたら送り込んでくるため、取締役会では貴重な時間の半分が自社製品の説明で費やされてしまう。誰もこのような事態を望んではいない。
(「ベンチャーキャピタルの実態と戦略」P179)

~前略~大手のリードインベスターが、MBA取り立ての若者を役員に送り込んできたのである。その人物は、MBA 取得前にヘルスケア業界でのキャリアを持っており、いかにも最適の人事に思えた。しかし、彼にとってこれが初めてのベンチャー企業担当だっただけでなく、初めての役員経験でもあったため、何も分かっていなかった。彼が重役の役割を学ぶために授業料が払われたのだと言う者もいた。
(「ベンチャーキャピタルの実態と戦略」P180)

~前略~一般にベンチャーキャピタルは、経営の経験が全くないのだ。月に1回か2回投資先企業で40%の時間しか働いていない。これではスタートアップ企業特有の仕事とその複雑さを理解するのに足りるわけがない~中略~インタビューを受けたCEO達も、経営経験のある取締役の方が、財務知識だけで経営経験のないベンチャーキャピタル出身の取締役よりも価値があると断言した。
(「ベンチャーキャピタルの実態と戦略」P183)

~中略~経営支援の必要性は認識していても、具体的な行動にまで至らない VCがある中で、経営支援を行えない理由を聞いた調査結果を見ると、「経営支援を行える人材がいないから」が約8割を占め、他の要因に比べ突出している。
(「概論日本のベンチャーキャピタル」P87)

というわけで、VCは思い切って、経営支援の外部委託をしてみるとよいのではないだろうか、とも思うのだが、知り合いに聞いたら、実際は自分のところでやりたいそうである。
まあ、金を出せば口も出したくなるのは自然なことだが。

以上、書斎の肥やし「概論日本のベンチャーキャピタル」「ベンチャーキャピタルの実態と戦略」を読んで思ったことを書いた。