2020/10/12

物事は広く浅くではだめ、狭く深くがいいですよ

台風が東にそれて土曜日の午後は雨上がり、私は予定通り、取手商工会の講演会を聞きにいった。
今春、私のワインバーのオープンの件をめぐり、二度ほど話したことのある経営コンサルタントのUさんの講演会だ。
たいていの講演会は期待外れで終わるのだが、まあ、Uさんの話なら一度くらい聞いてもいいかな、と思った。
散歩がてらに行ける場所で、聴講料はたった1000円。




昼食後、利根川の河川敷を散歩し、商工会には時間ギリギリの到着。
2階の会議室の聴講者は20名ほど。
前席でこちらを向いて座る眼鏡をかけた男性、関西弁で声が大きく、誰かと話せば非常に目立つUさんだが、この日は静かに座っていたので最初はあの人だっけ、と思った。
Uさんは60代半ばの経営コンサルタントで、起業支援の経営コンサルタントとしては草分け的存在である。




開始時間になった。
物静かな語り口でモデレーターの男性が挨拶をした後、早速Uさんの出番となった。
立ち上がり、元気で早口の関西弁でUさんがしゃべりはじめので、目が覚めた私は、ぱっとメモ帳を開いた。
Uさんの考える起業論の講演の始まりである。
ただ、経営コンサルタントの世界では結論を先に言うこと、ひと言でまとめることが重要である。
Uさんの講演を私が要約すると、つまり個人が起業するならニッチに尽きる!!
以上である。

ニッチでも、可能なら黎明期の新分野がいい。
新分野なら、競合が少なく見込み客が多いからだ。
また、1年程度でも専門家を名乗れるし、3年たてば権威として認められるかもしれない。
場合によっては、名刺に「カリスマ〇〇〇」と書いて偉そうにできるかもしれない。
まずは、小さく狭く、身の丈から始めよう。
あなたの住む町のオンリーワンでいい。
その場所で一定のポジションを獲得できれば、高収入かどうかは別として、食うには困らないだろう。

もう1つ、Uさんが話していたのは自己管理の重要性だ。
自営業は、客がいれば忙しいが、そうでなければひま(自由)である。
自宅でもスタバでもレンタルオフィスでもいい、パジャマでもTシャツとジーパンでもいい。
とにかく、誰からも怒られない王様の身分なのだ。
今日は天気が悪いし寒いなあ、じゃあ、今日は営業に行かないでいいや。
これは会社法上の経営判断というものだが、こういう経営判断も許される。

ああ、これを聞いて思い出した。
10年以上前のことだが、友人が司法書士事務所を開業し、数年は何も案件がなかったという話である。
今日も事務所のパソコンで毎日ネットサーフィンをして遊んでいますよ、と笑って言っていた。
当時、その状況の事務所に私は遊びに行ったことがあるのだが、さすがにマンガは置いていなかったが、ゲームなどの遊び道具もたくさん置いてあった。
誰だって仕事が来なければ、そういうふうになってしまうのだ。
しかし、そうなると仕事がもっと来なくなり、悪循環になる。
もちろん、仕事が来るようになれば好循環、遊べなくなるので仕事に集中しなくてはいけない、そうなると自然と仕事がはかどり、どんどん仕事が増える。

その他におもしろかったのは、大阪の旦那は本業で儲かると小料理屋を出すという話。
そこからUさんは多角経営の是非について話した。
本業と無関係な事業への多角化はだめですが、本業の派生事業であれば多角化はOKです、と言っていた。
前者は本業を弱体化させるが、後者は本業を強化するからである。
そのことをUさんは、本業の奥行きを広げると表現したので、私は相田みつをの詩の一節を思い出した。

入口(間口??)を広げれば奥行きは浅くなる。

確か、こんな詩があったような気がするのだが、正確には思い出せなかった。
相田みつをは経営の素人だが、さすが、大事なことは心得ている。
たぶん、物事は広く浅くではだめ、狭く深くがいいですよ、という意味合いだろう。
ほかにも、Uさんの失敗談や泣ける話などをいろいろ聞いたが、元気な関西弁だとそういう話は胸にぐっと来なかった。
そこだけは物静かな語り口の司会者の男性が適任であったが、彼はもう、教室の後ろの方で聴衆のひとりとして耳を傾けていた。

「創業スクール」と銘打たれた取手名物の起業家ゼミは全5回のコースである。
Uさんの講演会が第1回目であるが、私は来週から別に用事があり、今回だけのスポット参加である。
講演後、私はUさんと少し話してから商工会のビルを出た。
帰り道、駅ビルに寄り買い物をしたが、駅ビルの魚屋にはおいしそうな魚が見当たらなかった。
台風の上陸を予測し、仕入れを控えたのだろうか。
売場には消費期限間近で半額シールの貼られたパックの魚たちが並んでいる。
どれも鮮度が悪い。
私は100円ショップで必要な文房具を買い、バスに乗って帰宅することにした。