2020/10/02

私のセブンイレブン物語(1)コピー機のうしろのおじいちゃん

パンダカフェ


最近はコロナ禍で、図書館の近くのカフェで読書をすることが多い。
図書館で本を借り、ここで読んで帰りに返本するのも便利な読書方法である。
市民会館の運営するカフェなので、コーヒー1杯100円、パンとシチューのセットでも500円程度である。


パンダカフェ


きのうは、書斎の本棚の「ベルナールアルノー語る」を持ってカフェに行った。
ベルナールアルノーは、モエヘネシー・ルイヴィトングループ(LVMH)のトップ、ブランドビジネス業界の帝王とも言うべきフランス人の企業家である。
クリスチャンディオールもすでにLVMH傘下だが、ほかにも名だたるブランドをいくつも束ねている。


「ベルナールアルノー語る」


本書は彼の20年以上前のインタビューであるが、欧米人のビジネスに対するドライな考え方が述べられており、非常に参考になる。
儲かることを計算して実行する、これがビジネスの鉄則であると断言する彼は、IT企業に対して終始懐疑的な立場である。
ビジネスはバクチではない。
したがって、バクチのようなネットビジネスは、ビジネスと呼ぶに値しない。
それなのに、巨額の投資資金がそこへ流れ込むのは狂気の沙汰だという。
このインタビューから20年以上経過し、再びIT企業が過大評価されているが、今回のITバブルはいつまで続くのだろうか。
私には、彼のアプローチが古びたようには思えないのだが。

カフェの帰り道、書類の控えを取るため、久しぶりにセブンイレブンでコピー機を使った。
その時、コピーをしながら思い出したことがある。
今夏のことだ。
このセブンイレブンで夕方、郵便局に出す書類をコピーしていたら、見知らぬおじいちゃんがうしろにいて、コピーのやり方について突然訊かれた。

「ねえ、やり方がよく分からないから教えてほしいんだけど。」
「ええ、数枚ならいいですよ。」
「悪いね~。」
「最近のコピー機はややこしいから分かりにくいですよね。」

このおじいちゃ、少し図々しい態度の人であった。
どうも、最初から自分でコピーをする気はなく、自分の代わりにしてくれそうな人がコピー機の前に現れるのを待っていたかのようだった。
なので私は気が進まなかったのだが、おじいちゃんが困っているようにも見えた。
それに、手に持っている紙が2~3枚だけなら親切でしてあげてもよいかな、と思った。
そこで自分のコピーを終えた後、おじいちゃんの分もコピーした。
すると、私に非常に感謝して、一杯おごります、と言った。
もちろん、一杯とはお酒ではない。
レジの前に歩いて行き、おじいちゃんは自分の分と一緒に、私のためにセブンプレミアムコーヒーを注文した。

「あなた、ビッグサイズね。」
「はあ、すいません。」
「遠慮しなくていいんだよ~。」
「はあ、ごちそうさまです。」


セブンプレミアムコーヒーのビッグサイズ


私は雨が降り出す前に急いで郵便局に行きたかったが、おじいちゃんが「おごります」と店員の前で何度も言うので、仕方なくコーヒーをもらうことになった。
おじいちゃは上機嫌である。
私は、セブンイレブンのコーヒーメーカーの使い方が分からず、適当にボタンを押したら紙コップにホットコーヒーがジャーッと入り、びっくりした。

熱くてすぐ飲めないんだな、、、どうしよう。

私はとりあえず、おじいちゃんにお礼を言い、店を出て郵便局に向かって歩き始めた。
が、まもなく紙コップが熱くなり、自分で締めたフタは不完全でぐらぐらして、このままだとこぼれるので、いったんコーヒーを自宅冷蔵庫に置きに帰った。
いやいや、だいぶロスったな。
それからまた郵便局に徒歩で向かったのだが、郵便局の帰り道、雨がザーザー降り出してしまった。

何てこった、、、

さて。
私は、このおじいさちゃんから、いくつかのことを学んだのだった。
1つは、他人に何かをしてあげることの難しさである。
自分本位で考えず、相手の立場で考えることが重要だ。
もう1つは「老害」のことである。
コピーのやり方が分からないなら、分かろうとする努力をすべきだと思った。
最初から私にコピーしてもらう魂胆で物陰でこそこそ待ちぶせをするのではなく、自分でコピー機の前に堂々と立ち、悪戦苦闘でもしていればまだ良かった。

老害とは、
・できないことにトライしない
・分からないことを分かろうと努力しない
・新しいことを学ばない
・自分の固定観念でしか物事を見ない
・できること、分かることがあると、それは自分の得意分野なので、他人に何かをしたがったり、口を挟んだり、関わろうとする

私もこうならないように気を付けようと思うのだが、、、