2022/11/02

人生100年時代、他人の失敗談から学ぶ?? それとも、自分で失敗して学ぶ??

こないだ書斎をきれいに片付けた。
そのとき、1年ぶりに名刺を整理した。
紙の名刺はファイルブックに保管し、溜まってきたら一部を処分するのだが、今回の処分候補の名刺の中にDさんの名刺があった。

そういえばDさん、いま、どうしているかな、と思い、名刺の住所をGoogleで検索した。
が、雑居ビルの一室はすでに空き物件。
新型コロナウィルスの蔓延以降、彼とは音信不通なのだ。

私は彼のことを思い出してみた。
彼とはビジネスの交流会で知り合ったのだが、私よりも10才前後年上で、当時、ビルメンテナンス会社の社長だった。
都内の居酒屋で何度か飲んだが、彼は典型的なアルコール依存体質であった。
私の前で浴びるほどの酒を飲み、トイレに行ったまま戻らないこともあった。
また、いつも体調が悪いとぼやいていた。






「ぼくが上京してきた頃はバブルの絶頂期でした。」
「そうですか。」
「バブルなら毎晩、パーティーですよ。」
「そうでしょうね。」
「だから当時、ぼくは仲間とイベントの企画運営会社を始めたんです。」
「おお、いいですね。」
「でも失敗しました。たとえバブルでも、パー券で儲けるのは難しいんですよ。」
「な、なるほど。」

また、彼はこんなことも言っていた。
「バブルといえば株式投資ですよね。」
「まあね。」
「今と違って、当時の日本株は何でも上がったんです。うん、今ではまったく考えられないことなんだけど、買えばものすごく上がった。シロウトでも簡単に儲かった。でも、バブル崩壊で株価が大暴落して、それはもうあっという間の出来事でね、ぼくも仲間たちも大損しちゃいましたけどね。」
「な、なるほど、、、」

いくら損したのかは聞かなかった。
が、彼はこんな感じで、お酒が入ると私に様々な人生の失敗談を話してくれた。
バブル崩壊で大損した後、彼は職を転々とし、苦労があったようだ。
そして数年前、名刺の会社を起業し、そこそこうまくいっているという。
しかし、働きすぎで、1日のほとんどがデスクワークで、肩こりと疲れ目と頭痛がひどい、こればっかりは医者にいっても治らない、といっていた。
なるほど、彼が酒を飲むのは、肩と目と頭の血行をよくするための民間療法なのかしら。

さて、ここからは唐突な話だが、彼の最も重要な打ち明け話を少し話そう。
実は、彼は癌なのである。
医者から余命宣告を受けている。
数年前、余命数ヶ月と言われ、手術をして助かったものの、退院後は再発を心配する日々という。
そろそろ再発の周期に来ている、再発が判明したら、いよいよ自分の人生が終わる。
彼はビールのジョッキを眺め、死ぬ前に故郷に帰りたいと言ったが、彼は長男ではないため、居場所がないそうだ。
そして数ヶ月後、彼から不意のメールが来て、やはり再発したので~と簡単な報告が書いてあった。
それっきり音信不通である。

ええと、この名刺、どうしよう、、、
大事に保管しておいてもしょうがない、シュレッダーにかけよう。
ただ、今は便利なことにスマホのカメラがあるので、Googleのフォトスキャンで撮影してから処分した。
癌が再発し、その後、事務所が空き物件になったから、彼はもう死んだんだと思う。
いやいや、彼ほどしぶとい男なら、何だかんだいって、今夜もどこかの居酒屋で飲んだくれて愚痴っているのかもしれない。
できればそうであってほしいのだが、いずれにせよ、彼は平穏無事に、故郷へ帰れたのだろうか。




私にとって、このDさんとの短い交流の時間は貴重だった。
当時の私には、事業と投資に失敗したDさんが、私に向かって天の啓示(警告)を発する重要な登場人物で、ある種のメッセンジャーのような気がした。
つまり、私は彼を見て、彼の話を聞いて、彼と同じ悪い運命に引き込まれるのではないかという恐れを抱いたのだ。
しかし、彼は私のことを非常に高く買っており、酒席ではいつも、きみなら事業も投資もうまくいく、頑張れ、と私を励ました。
彼は私に、自分と同じにはならないと言って、私の前から消えたのだ。
だから、私なら大丈夫、何とかなる、、、そう思うようにしている。

彼の失敗談から学ぶ、ということについてだが、成功までの道のりは人さまざまで、他人の成功から学べることなど実際にはほとんどないと思うのだ。
そうだとすれば他人の失敗から学べることも同様のはずである。
私は思うが、自分で実際に行動してみて、自分で失敗して、試行錯誤をしながら学ぶ、そのほうがいいのではないか。

ところで、私の知り合いに、起業家になりたいという若い人がいるのだが、彼は失敗しないように入念な準備をしてから起業したいという。
そこでまず、いい会社に勤めて、いろいろな経験をして、人脈を作って~と私に語るのだが、どうなんだろう??と思う。
私は以前顧問をしていた会社の社長Cさんに、彼を引き合わせたことがある。
するとCさんは彼の本質を見抜き、ズバリ、あなたは起業せず会社員として生きるほうがいいですよ、と言った。
昔とは違い、いまは人生100年の時代である。
それならば、若い頃に1度や2度の失敗を経験する余裕はあると思うのだけど。