2019/07/25

The Chronicle of Noble Lady(4)ダイアナ効果

7月下旬、私とIさんは紀尾井ホールに一緒にコンサートを聞きに行った。
私にとってこの日は、クラシック音楽の師匠はIさんである、と確信することとなった重要な日だ。

午後4時、紀尾井プリンスの駐車場の入口でIさんと待ち合わせた。
私は少し遅れてしまい、Iさんは駐車場フロアの玄関口の椅子にちょこんと座って待っていた。
私たちはエレベーターで、35階へ。
ここには、スカイギャラリーラウンジレヴィータという夜景の見渡せるデートスポットがある。
私たちはカップル向けの席に向かい合って座り、乾杯のシャンパン付きのディナーコースを頼んだ。
Iさんはお酒が飲めないので私だけが、シャンパンを飲んだ。


スカイギャラリーラウンジレヴィータ


スカイギャラリーラウンジレヴィータ


スカイギャラリーラウンジレヴィータ


乾杯の後、インスタ映えしそうな料理が次々と運ばれてきた。
しゃれた料理を食べながら、Iさんがその料理の評論をするのだが、これがかなりの毒舌。
Iさんはパリの超一流レストランと比べたりして、私には付いていけなかった。
そのうち、クラシック音楽の話題になった。
この後のコンサートはヴァイオリンのソロである。
しかし、Iさんも私もピアノ好きで、ヴァイオリニストの話題から次第にピアニストの話題となった。
いつものように有名演奏家たちの様々なエピソードを聞いた。
そして最後に紅茶を飲んでから、私たちはレストランを出た。

今夜のコンサートチケットは私の負担だが、食事代がワリカンか、私の負担かはよく覚えていない。
Iさんといるといつも楽しいので、私にはそういうことはあまり重要ではなかったのだ。
Iさんから頼まれたことについては、頼まれた内容を明らかにしておくこと、残しておくことが重要と考え、書面にしたのだが、それ以外のことは、お互いこだわらないようにしていたから忘れてしまった。
 
その後、紀尾井プリンスの駐車場からタクシーで紀尾井ホールに向かった。
紀尾井プリンスの向かいのホテルニューオータニの建物を見て、ふと思い出したようにIさんは昔話を始めた。
以前はここにお唄や三味線の先生のお屋敷があって、お友達もいたので出入りもあったのだが、次々と家屋敷を売り払い転居を余儀なくされた、いつのまにか全ての土地がニューオータニのものになってしまったという。
タクシーの運転手も黙ってその話を聞いていて、紀尾井ホールの前でUターンをするときに私たちにニューオータニの悪口を言った。

タクシーをおり、私たちは紀尾井ホールの中へ。
今夜は「明日への扉」という若手ヴァイオリニストのコンサートである。
ディアナティシチェンコ(Diana Tishchenko)というウクライナの女性ヴァイオリニストが演奏するのだが、彼女は2018年のロンティボーのヴァイオリン部門で優勝した実力派だ。
それにしては、チケット代が1枚2500円と安かったので、私はペアチケットを事前に確保しておいたのだ。


紀尾井ホールのディアナティシチェンコのヴァイオリンコンサート


ドレスでステージに登場した彼女は、かなりの美貌の持ち主だった。
しかし、彼女が聴衆を魅了したのはその美貌よりも演奏の方だった。
プログラムは、ラヴェル、エネスク、シマノフスキ、プロコフィエフ、そしてアンコールはバルトーク。
とくに伴奏ピアニストとのコンビネーションが完璧で、Iさんも私もじっと目を閉じて聞き入った。




アンコールピース、紀尾井ホール、ディアナティシチェンコ

 紀尾井ホール


コンサートが終わった。
アンコール曲の掲示板の前で記念撮影をした後、私たちは満足して紀尾井ホールを出た。
帰りはタクシーで四ツ谷方面に向かった。
私を四ツ谷駅でおろして、Iさんは自宅までタクシーで帰るという。

「Iさん、チケット代は2500円ですが、良かったですよね?」
「ええ、とても良かった。2500円とは思えない。」
「実はこれは「ダイアナ効果」と呼ばれるものです」
「ナニソレ?」
「ええと、ディアナダムラウさんの綴りはDianaです。今日のディアナティシチェンコも、綴りは同じDianaです。だから、間違いのない演奏家と思ってIさんをお誘いしました。」
するとIさんは笑って、「あなた、なかなかやるわね。また、連れてってね」と言った。