2019/07/20

コンサートバブル

きのうは、うちのママ殿と一緒に丸の内のコットンクラブで、アンディーナレル(Andy Narell)のカリビアンジャズを聞いた。
ママ殿はジャズの大ファンだが、これまで一緒にジャズを聞きに行ったことはなかった。
あるとき2人で話していて、ママ殿がくたばる前に一緒にジャズを聞きに行こうということになり、酷暑で明日くたばるかもしれないから今日行くことにしたのである。
私は詳しくないが、アンディーナレルはスティールパン(楽器)の演奏者として世界的に有名である。
しかし、確かに彼の演奏も素晴らしかったのだが、私が最も感激したのはキューバ人の女性ピアニストの演奏の方であった(ジャネスマファーソン(Janysett McPherson))。


丸の内コットンクラブアンディーナレルジャズコンサート


私たちは左側の前から2番目のボックス席に座ったので、ピアニストと鍵盤が間近に見え、ピアノの音色も良く聞こえた。
彼女のジャズピアノは、南米のリズム感、打鍵と早弾きのテクニック、ペダルの使い方など、脇役とは思えないほど見事なものであった。
クラシックもジャズも欧米文化である。
やはり、日本人演奏家のおとなしい演奏とは明らかに違っていた。
欧米の演奏家の方が一枚上手なのだ。
その点からすると、最近の日本人演奏家のコンサートは、チケットの相場が少々高すぎである。
高騰するチケット代と演奏内容が、必ずしも見合っていないことが多い。


丸の内コットンクラブアンディーナレルジャズコンサート




(丸の内コットンクラブ内のカウンターのママ殿)

 
さて、ここからは今日の話。
今日は、岩下志麻似の劇団員Rさんを誘って、銀座のシャネルネクサスホールでピアノコンサートを聞いてきた。
銀座のシャネルには「シャネルピグマリオンデイズ」という招待制コンサートがあり、これはシャネルが日本人の若手演奏家を抜擢し、1年契約でシャネルの客の前で演奏させる若手支援育成プログラムである。
近年ここから何人かの実力者が出ているので侮れないのだが、今日は、去年の日本音楽コンクールの優勝者の吉見友貴さんのピアノコンサートであった。
最近のチケット相場だと、彼のチケットをふつうに買えば4000~5000円はしそうだが、そのレベルの演奏を聞けるのだろうか。
実は私は5月にも、ここで同じ吉見友貴さんのピアノコンサートを聞いていた。
その時の曲目はベートーヴェン、後期ソナタなどがプログラムされたが、吉見さんの演奏に対する私の第一印象は悪かった。




今日はどうだろう。
プログラムにはフランスの曲が並んでいる。
ドビュッシー、ラヴェル、そしてなぜか幕間に武満徹という奇妙なプログラム。
演奏前に自己紹介の時間があるのだが、まだ桐朋音大の1年生。
背が高く、若くて素直な好青年なのだが、まだ少し頼りない感じもする。
海外には1度しか行ったことがなく、とんちんかんな話をしていた。
シャネルの客といっても、昔とは違ってクラシック音楽に精通しているとは限らないので、演奏家が曲目の解説をする時間もある。
ただ、話を聞いても、なぜ武満徹なのかはよく分からない。




演奏が始まった。
こないだのベートーヴェンの時はギクシャクしていたが、今回のフランスのレパートリーは予想外によかった。
彼はタケミツをユニークに演奏し、なんだかこれは日本の曲ではなく、おしゃれなフランスの曲のようだと私は納得した。
私の評価だと、こないだのベートーヴェンは「挑戦」であり「失敗」だったと思う。
しかし今回のフランスの曲は「好きな曲」であり「大成功」だろう。
まあ、チャレンジは失敗することも多いのだし、まだ学生なので気にすることもない。
コンサート終了後、ファンに囲まれるのかと思ったら、そんなことはなかったので(シャネルのコンサートだからであろう)、私は吉見さんと少しだけ話すことができた。

吉見友貴、もう1度聞いてみたい、と思える数少ない日本人ピアニストとして覚えた。
そして、Rさんと一緒に松屋の交差点で流しのタクシーに乗り、帝国ホテルへ。
こちらの方がシャネルの高級品をねだられるよりもずっと安上がりだから、というわけではないのだが、私の口にもおいしい食べ物が入るし、彼女もおいしいものを食べれば満足する。








それにしても、今月私はコンサートに4回も行っている。
来週も、コンサートの予定がある。
通常のペースだと2~3ヶ月に1回ほどだから、明らかに私はコンサートの「行き過ぎ」である。
もしかしていまが私にとっての「コンサートバブル」なのかもしれない。
でも、まあ、私ひとりがバブルになることを、バブルとは言わないだろうし、私ひとりがチケットを買ってもチケット代があのように高騰するわけがない。
そうすると、こうして私がコンサートに頻繁に通っており、他の愛好家も頻繁に通っており、これにより今、演奏家たちにとって「コンサートバブル」であることも間違いがない。
全てのバブルはいつか弾ける。
だが、コンサートバブルはいつどのようにして弾けるのだろうか。