2024/01/18

短冊って何かしら?

以下は、1月某日、とある司法書士の先生と私の電話のやりとりを、チョット書き改めたものである。

「それで、加藤先生は、初詣はどこに行かれたんですか?」
「実は、年末年始、私は風邪で寝てたんですよ。初詣は、先週ようやく、浅草寺で済ませてきました」
「あら、大変なお正月だったんですね」
「ええ。母も年末年始、風邪でダウンして肺炎になりました。高齢者は年末年始、たかが風邪でも要注意です」
「お母さま、お大事に・・・」
「今はもう大丈夫ですけどね。そうそう、話は変わりますが、初詣の帰り、浅草駅の書店で、自分の本を立ち読みしたんですよ」
「あら、加藤先生は面白い人ですね。書店で自分の本を立ち読みするなんて」
「まあ、自分の本を立ち読みするなんて、ヘンな人ですよね・・・」
「でも、オシャレで、イイと思います」
「本当に?」
「ええ、普通はできないことだもの」
「まあ、そうですよね。でも実際、私の本は発売から2ヶ月たつので、書棚の片隅に1冊か2冊、挿し込んであるだけです。本屋によく行く私も、誰かが立ち読みする光景なんて、まず見かけません。だから、仕方なく自分で立ち読みするということもあります」



(浅草のくまざわ書店は縦置き)


(丸の内の丸善本店は平積み)


(柏のジュンク堂書店は横置き)


(北千住ルミネのブックファーストは横置き)


「そうね。平積みなら表紙が見えるので、思わず手にとることがあるけど、タイトルだけだと、お客さんの目にとまらないですよね」
「そうなんですよ。だから、自分の本を書棚から取って、立ち読みをしたら・・・さりげなく、出しっぱなしにして帰ります」
「あら、狙いはソレだったの? 先生、片付けないのはよくないわよ」
「いやいや、背に腹は代えられません。ちなみに、うちの母のアイディアです」
「あら、司法書士の先生が、お母さまのせいにしてはいけませんよ」
「ええと、本当の話なんですけどね・・・でも、立ち読みの目的は、実は、他にもあります」
「どんな?」
「著者は原稿を書いているときが最もよく分かっています。原稿を出した後は、試験を終えた受験生のように、どんどん忘れます。ゲラを校閲するとき、自分は原稿にこんなこと書いたっけかな?と思い、確認することもあります。校閲後は、自分の手を離れるので、さらに内容を忘れてしまいます」
「毎日、忙しいとそうなりますよね」
「だから、私は本屋に寄ったとき、立ち読みをして思い出したり、チョット確かめたくなるんです」
「著者ならば、気になることはたくさんありますものね」
「ええ、それで・・・浅草で立ち読みしたときのことですが、本に短冊のようなものが挟んでありますよね?」
「短冊って何かしら?」
「会計のとき、レジで店員さんが抜きとる、しおりみたいなものです」
「ああ、アレですね」
「そうそう。私、初めてアレを抜いて裏を見たんです。すると、11月入荷の私の本は、2月返品と書いてあったんです。他の本を見ると、12月入荷なら3月返品でした。どうも、新刊は3ヶ月で出版社に戻されるようです」
「まあ、そうなの!」
「新刊は次々出るので、売れない本は容赦なく、排除されるのでしょう」
「厳しい世界ね。街の本屋さんは、買い切りというわけでもないのね」
「そのようですよ。私、詳しく知りませんが、書店では本の命は短い。アマゾンなどでは、ロングテールといって、細く長く売れるのが特徴です。しかし、街の本屋さんは売場スペースの問題もあり、短期決戦で回転が早いんです」
「・・・あら、加藤先生、ごめんなさい。外に、お客さんか来たみたいだわ」
「そうですか。では、例の件、よろしくお願いします」

ということで、電話を切ったのだが、その後、インターネットで調べてみると、書店の本は基本的に委託販売であることが分かった。

「日本で発行されているほとんどの書籍には、カバーがかけられています。ずれたり弛んだりして邪魔になるから、読むときにはカバーを外す、という人もいるでしょう。カバーがなくても、表紙さえあれば本は成り立つはずです」
「では、なぜカバーが付いているのか。その理由のひとつが、「取り替えられる」からです。日本で流通している本の大半は、「委託販売制度」のもとで売られています。この制度は「返品条件付き売買」または「返品制」とも呼ばれています。出版社は、問屋である取次会社を通して、小売店である書店に本を委託し、売ってもらいます。売れずに一定期間が過ぎると、書店は取次を通じて出版社に本を返すことができるのです。もちろん、売れなかった分の代金は出版社には一切入りません」
「書籍の委託には、新刊委託(約3ヵ月)、長期委託(4~6ヵ月)、常備委託(1年)があります。書店に並べられた書籍は、たくさんの人の手に触れることによってカバーが汚れたり、傷ついたりします。そのまま売れずに返品された本は、出版社でカバーや帯が新しいものに取り替えられ、再び別の書店へと送られていくというわけです」

要するに、無料お試しではないが、書店は3ヶ月、在庫リスクなしで本を売れるということなのだ。
3ヶ月の期限付で、返品する権利があり、その権利を行使するしないは書店側の自由である。

もし返品しないと、3ヶ月経過後、出版社から本のお代を請求されることになる。
書店側は、この本が売れると思うなら、一定数を買い取り、書棚に引き続き置くこともあると思われる。
儲かっている書店、売場面積の広い書店、店員が本に詳しい書店は、そういうことができるだろう。
しかし、経営不振の書店、狭い書店、店員が本に詳しくない書店だと、そんなことするよりは、何も考えずに新刊を入れ替える方がいいわけである。
もっとも、書店の経営方針の問題でもあるから、何とも言えないかもしれないが。
ということで、浅草のくまざわ書店の私の本が、2月以降、どうなるのか、チョット気になるところである。