2024/02/11

愛するあなたへ全財産を与える遺言書の書き方!?

チョット嫌な予感がする。
私の書いた本は、終活の本である。
終活とは、端的にいうと、「死ぬ」準備=「墓」に入る準備をすることである。

年末年始、私は、風邪でダウンして、寝込んでいた。
最初にママ殿が風邪を引き、それが私にも感染したのだ。
正月明け、私はママ殿を総合病院に連れていったが、ママ殿は、風邪をこじらせて肺炎になっていた。

1月、薬物治療で症状は改善。
ママ殿は自宅療養をした。
2月の再診では、医師から、もう完治しています、心配ない、といわれた。
しかし、家に帰ると、ママ殿は胸のあたりに手を当て、まだ違和感が残っている、いやな予感がする、などというのだった。

「ママ殿は、そんなに、いやな予感がするんですか、、、」(*'ω'*)
「アナタ、覚悟しておいていたほうがいいわヨ!」ママ殿は、やけに深刻な雰囲気で、「私は・・・今度風邪を引いたら、今度こそ肺炎で死ぬわヨ」
「ハハハ、まさか~。脅かさないでくださいよ。今の時代、気を付けていれば、そう簡単に肺炎で死にゃしませんよ。今回は年末年始で不運でしたよね」
「そうね、、、つい我慢して、後手後手に回ってしまったわ」
「ところで、ママ殿・・・いい機会なので、本格的に終活をしてみるのはどうですか?」
「終活・・・」
「遺言とエンディングノートを書いておき、いつ死んでもいいように準備しておきましょう」
「そ、そうね、、、去年、息子が書いた終活本が、早速、母親の役に立つとは、何とも皮肉な展開だけど」
「まさにこれは実用書なのですから」
「でも、この本、意外と難しいのよ」
「まあ、書かれていることは法律の知識ですからね。しかし、息子の書いた本なら、多少難しくても何とか読めるんじゃないですか」
「そうなのよ。フシギと・・・」
「ああ、そうだ」私は思い出した。「書斎の本棚に、佐藤愛子先生の遺言というエッセイもあります。読み疲れたら気分転換で、そちらも読んでみるといいですよ」
「へえ、、、アナタの本より面白そうだから、すぐ持ってきて」

我が家の書斎の本棚に、佐藤愛子先生の「私の遺言」という本があるのだ。
私はその本を手に取ってきて、ママ殿に渡した。
ママ殿は家事をしなきゃ、と言っているが、もうしばらく、読書でもして静かに過ごす方がよさそうである。




その後、私は、自分自身の終活のことも考えた。
今のうち、自分も終活しておいたほうがいいのではないか!?と思った。
医師は、風邪をこじらせて肺炎で死ぬ人も多いといっていたし、これからの時代、新種のウィルスに感染して、突然、死んでしまうこともありそうだ。
そこで私が考えたのは、愛する人に全財産を与える遺言書を、したためるということであった。

私の終活本の中では、典型的な核家族(父、母、子供2人)で事例を書いた。
そのため、愛する人に全財産を与える極端な遺言の書き方を、書いていなかった。
ちょうどいいので、このブログにでも、書き方を残しておこうか。

遺言には大きく分けて3つの方式がある。
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言

このうち、1人で手軽に書けるのが自筆証書遺言である。
自筆というだけあって、パソコンで作るのはだめ。
最近の改正で財産目録をパソコンで作ってもよいことになったが、遺言のメインの部分はなお、自筆に限られる。

とはいうものの、自筆証書遺言は書き方の簡単な決まり事があるだけで、それさえ守ればわりと柔軟な記述が可能である。
余事記載として、子供へのメッセージなどの記述もできる。
遺言に書けば効力が発生する遺言事項と比較し、これを「付言事項」などというが、自筆は手軽に書けるからミスがあると無効になってしまうということもあり、その点、注意が必要である。

それでは、愛する人に全財産を与える遺言の書き方を、自筆証書遺言の方式で実際書いてみよう。

まず、相続人の誰かに全財産を与えたいなら、全財産をその者に相続させると書けばいい。
例えば既婚者の私が奥さんに全財産を相続させたいなら、そのことをただ書けばいいので、話は簡単である。
ただ、遺留分(最低限もらえる遺産の取り分)がある相続人がいる場合、全財産を与えるならその者の遺留分を侵害することになるので、あとで遺留分を請求されて相続人たちの間でもめることが想定される。
この権利は、遺留分侵害額請求権といわれる。

次に、相続人以外の誰かに全財産を与えたい場合、どうすればいいのか。
この場合、全財産をその者に遺贈させることになる。
遺贈とは、遺言書により贈与をすることである。
通常であれば遺贈の相手は相続人以外の誰かで、例えば内縁の妻、連れ子などが考えられる。

例えば独身の私が大好きなAさんに全財産を遺贈する場合を考えてみる。
この場合も、私に相続人がいるとしてその遺留分が問題となるが、そもそも兄弟姉妹には遺留分がないため、全財産を遺贈する遺言があれば何ももらえない。
これに対して、子供、配偶者、親などには遺留分があり、Aさんが遺贈を断った場合には、法律の相続のルール(法定相続)に従って、彼らに遺産が渡ることになる。
しかし、一般に、Aさんに全てをあげたい人は、相続人にはなるべくあげたくない、と考えている可能性が高い。
そこで、遺言に但書(要するに、第2希望のようなもの)を付けておくことが考えられる。
例えば、「私は全財産をAさんに遺贈する。但し、Aさんが受け取らない場合は社会福祉施設B法人に遺贈する」といったように遺言書を書いておくのである。

なお、遺言書は、日付(年月日)、氏名、ハンコを忘れずに。
ハンコは、実印がよい。
紙は、100均に売っている普通の便せんで十分だ。
筆記用具は、油性ペン、万年筆など、消されないものがよいだろう。

書いた遺言書を、どこに保管するのかも問題である。
最近、法務局に自筆証書遺言を預けられる便利で簡単な新サービスができた。
今のところ保管料は1通3900円である。
相続開始後の家庭裁判所で遺言の検認手続が不要となるのも利点であり(法務局における遺言書の保管等に関する法律11条)、少なくとも自宅の金庫などにしまうよりは、良いと思う。


法務局遺言書保管手数料一覧
(法務局資料より)