2019/11/21

太田記念美術館「ラスト浮世絵」

11月といえば学園祭の季節である。
私は今日、慶應義塾大学三田キャンパスで、三田祭を見て来たのだが、これが非常におもしろかった。
開催初日の午前中であったため、マンモス大学の学園祭とはいえ、まだ空いていた。
校門の向こう側に三田祭の赤い看板があることを除いては、普段と変わらないキャンパスのようにも見えたが、校門の手前で女子アナがマイクを持って実況中継をしている。


慶應三田祭


あれはテレビ局の女子アナかと思ったが、よく聞くとその語り口が上手ではなかった。
どうも地上波ではなく、インターネットテレビの女子アナのようだ。
私は校門を入り、左手の階段を上がった。
一段上のキャンパスには、すでにかなりの人数が集まっており、ああ、やっぱり、学園祭のムードだな、と思った。

行きたいところは事前にパンフレットを見て決めてあった。
キャンパスに入ってからは、そこへ向かって歩くだけだ。
しかし学園祭には、新宿歌舞伎町の住人たちも顔負けの客引きがいる。
早速、私は校舎の2階の廊下で、チラシ配りの女子大生に捕まってしまった。
彼女は着物姿、ひと目で落語研究会の女の子だと分かった。




「あそこの教室で落語をやるので、聞いていきませんか。」
「いや、ちょっと目的地があってね。」
「落語もおもしろいですよ。途中退席もOKですから、ぜひぜひ、ちょっとだけ。あと1分で始まっちゃいます。」
「すみませんけど、私は、似ている芸能人をAIが診断します、っていうのを見にきたので、その教室を探してるんですが、234号室って、どこだか分かります~??」
「234号室、、、え~と、AI診断は今日の出し物じゃないですよ。」
「えっ、まじで??」
「これは明日以降の出し物です。」
「そ、そうか、残念だな。」
「残念ですね~♪♪ それじゃ、落語を一席どうぞ。」
「どうしようかなあ。」
「あと10秒で始まっちゃうから、さあ、入って入って。」


慶應三田祭の落語研究会


私は、彼女に背中をポンと押され、そのまま落研の教室に入ってしまった。
すでに室内は薄暗く、ステージに照明が当たっている。
私が座席につくと、太鼓が鳴り、舞台袖から第14代目乱痴(らんち)さんが登場。

あっ!!
私、この人のこと、知ってるんだけど、、、

何たる偶然か、去年12月に南館ホールで慶應文連のイベントがあり、落研の部長として一席披露した彼のことを私はよく覚えていた。
その時は「まんじゅうこわい」であった。
そして今日の乱痴さんは「道具屋」を話すようである。

なるほど、「道具屋」か。
まあ、彼なら、きっとおもしろいから聞いていこうかな。

「道具屋」はあまりにも有名な話で、こちらはオチまで知っている。
しかし落語とは不思議なものである。
上手な落語家は次が分かっている客を笑わせるのである。
乱痴さんの道具屋は私の期待通りで、若々しく、非常に斬新で良かった。
ただ、隣の教室からロックバンドの激しい演奏が地響きのように聞こえており、私たちにとって近所迷惑も甚だしかった。
まあ、これもまた学園祭の醍醐味と思って笑い飛ばせばよいことだが。


慶應三田祭のコンサートのステージ


道具屋が終わり、私は落研の教室を出た。
次はどこへ行こうかな。
結局私は、やきものコーナー、画廊コーナーなどを回り、1時間ばかりキャンパスの中をぶらぶらした。
途中、慶應の女子大生の写真集「慶應美女図鑑」の売り場ブースもあって、初日なので写真の女子大生たちが何人か待機していた。
私は記念に1冊写真集を買ったが、サービスで彼女たちの生サインを書いてもらった。
彼女は将来、女子アナにでもなるのだろうか。

その後はランチを済ませ、田町駅まで戻り、山手線で原宿駅まで行った。
明治神宮方面の少し先の路地に太田記念美術館という浮世絵の美術館があるのだが、今日は「ラスト浮世絵」というおもしろそうな企画展をしていた。


太田記念美術館「ラストウキヨエ」展示会


太田記念美術館「ラストウキヨエ」展示会


今回の企画展「ラスト浮世絵」とは、明治時代以降の浮世絵のことである。
浮世絵といえば江戸時代のものと考えられがちだが、むろん明治維新後も浮世絵師は仕事をし、作品を作り続けていた。
しかし、急速な時代の変化に翻弄され、明治の浮世絵はマイナーアートになり下がってしまったのだ。
西洋文化を取り入れる中で、歌舞伎などと同様、浮世絵はダサいものとみなされた。
今回は、そのマイナーな時代のダサいとみなされていた浮世絵コレクションを集めたのだが、日露戦争の浮世絵、明治の女性の美人画、なんだかデザインのようなウキヨエなどがあり、多種多様でおもしろかった。

1時間ほどで全ての展示作品を見終えた。
私は、帰る前にトイレを探したが、トイレは地下にあるというので、人の気配のない階段をおりた。
地下にはトイレのほかにミュージアムショップがあり、客は誰もいなかったが、私は何かおみやげを買いたくなった。
ミュージアムショップというのはなかなかよくできており、つい買ってしまうような記念品が置いてあるものだ。

おや、あれはいい。
さっきの明治女の美人画のレプリカがあるぞ。
かなり良くできている。

しかし、値札を見ると1万5000円ほどであった。
値札とは別に商品の説明もあり、そこには、職人が手彫りをした元画から刷ったものです、と書いてあった。
私は1つ欲しいと思ったが、何とか思いとどまった。
1万5000円は高いと思ったからだ。
1万5000円の理由は商品説明のとおりだが、なぜ私がそれを高いと思ったか、さっきの慶應美女図鑑よりも10倍以上もするからである。
明治の古くさい女性のカラー印刷が、慶應の女子大生の写真集の10倍以上もするなんて、どう考えてもお高い。


2019年三田祭パンフレット、慶應美女図鑑