2019/08/17

The Chronicle of Noble Lady(6)東劇メットライブビューイングオペラ、ヴェルディー「椿姫(La Traviata)」

2日連続で、東劇のメットライブビューイングオペラを見た。
きのうは、ママ殿と一緒に「椿姫(La Traviata)」を見た。
確か、ママ殿は先月も私と一緒に丸の内のコットンクラブでおいしいコース料理を食べたはずだが、おいしいものを食べたいと言うので、銀座でフランス料理を食べてから東劇へ行った。










ママ殿はメットライブビューイングオペラが初めてである。
これは、ニューヨークメトロポリタン歌劇場の生公演を録画編集した、オペラ映画の上映会である。
生公演より格安で超一流の海外オペラを堪能できてしまうのがセールスポイント、メットライブビューイングオペラと呼ばれ、世界的に人気がある。
今回の椿姫はディアナダムラウ(Diana Damrau)であった。彼女は世界で最も人気と実力を兼ね備えたオペラ歌手のひとり。
実はこれ、2月の東劇の再放送。


ディアナダムラウ


私は2月の東劇でも、ダムラウ主演のまったく同じ「椿姫」を見ている。
そのとき私は、クラシック音楽の師匠Iさんと知り合った。
「椿姫」が終わり東劇のラウンジに出た私は、スロープの壁に張られた舞台写真をスマホで撮影していた。
するとそこにIさんが近づいてきて私に声をかけてきたのだ。

「あ、いたいた。ねえねえ、ちょっといいかしら。」
「な、何でしょう?」
「あなた、私の記念写真も撮ってほしいんだけど。」

いきなり、ねえねえと言われても困るなあ。
私、おばあちゃんからナンパされてるわけじゃないよね。
見知らぬ白髪の女性、近くの席にいた人かな。
いや、記憶にない。

まあ、とりあえず、ディアナダムラウの舞台写真をバックに、Iさんの記念写真を撮ったのだが、今度は東劇の職員が私たちのところに来て、せっかくなので、お二人の記念写真も1枚どうでしょうか、と言われた。
私たちはツーショット写真を1枚撮ってもらった。
職員はすぐに立ち去り、私のスマホで撮った写真をIさんにどうやってあげようか、という話になった。
私はIさんに連絡先を聞いた。するとIさんは、手っ取り早くラインで送ってちょうだいと言い、私たちは出会っていきなりライン友達になってしまった。

その後はまさかの展開に。
Iさんが突然、私はダイアナと親しいのよ、などと言い出した。
そしてなんと、高級ホテルの部屋で撮ったダイアナ(ダムラウ)との記念写真を私に自慢げに見せてくれたのだ。
私は驚くと同時に、ダイアナのことを聞きたくなった。
が、それよりも、杖をついて歩くIさん、無事1人で帰れるのだろうか。
私には、目と鼻の先のエレベーターホールまで行くのもひと苦労に見える。
一体どうやって家まで帰るつもりだろう。
でも、ここまで1人で来たなら、帰りも1人で大丈夫だとは思うけど。
おや、おばあちゃんのかばんに付いているのは、障がい者用の赤いヘルプマークではないか。


(茨城県ホームページより)


「あのう、おばあちゃん、まさかその足で東銀座の駅まで歩いて行くの?」
「うーん、駅はちょっと、遠いわね。」
「交差点でタクシーを拾うんですか?」
「そうね、タクシー。でも夜の大通りは混んでるから、うまく拾えるかしら。」
「では、ご一緒しますから、私が拾いましょうか?」
「あら、親切ね。あなた、手伝ってくれるの?」
「別にいいですよ。」
「ありがとう。お願いするわ。」
「ところで私はこの後、文明堂カフェに行くつもりなんです。お急ぎでなければ、お茶でもご一緒しませんか?」
「あらまあ~、もちろん、いいわよ!!」

Iさんと一緒にゆっくり歩き、歌舞伎座のそばの文明堂カフェへ。
ラストオーダーのまぎわで数組の客しかおらず、私たちは静かな席で30分ほど話すことができた。


文明堂カフェ


まあ、このように2月の再放送の「椿姫」は、Iさんとの出会いのエピソード付きの思い出深い椿姫なのである。

さて、今日もまた東劇に来た。
今日のオペラもディアナダムラウ主演だが、「ロミオとジュリエット」のジュリエットの役である。
シェークスピアの名作「ロミオとジュリエット」、定番中の定番であり、劇中、シェークスピアの名言集に載っているセリフも聞かれた。


「シェークスピア名言集」


しかし、このオペラの音楽は、シャルルグノーの作曲である。
シャルルグノーの音楽は、「椿姫」のウェルディーと比べれば退屈で凡庸だ。
シェークスピアなのでストーリーが抜群におもしろいとはいえ、何かが物足りない。
私はここで、ヴェルディーの音楽のすばらしさを改めて思い知ったのだった。

オペラが終わりロビーに出た私は、いつものように壁に張られた写真を見ることにした。
この日はダムラウの写真ではなく、ドナルドキーンの写真があった。


ドナルドキーン


そういえば、先日ドナルドキーン死去のニュースを聞いたばかりだが、まさか彼がここ東劇のメットライブビューイングの常連客だったとは。
子供のような笑顔の写真があり、その隣を見ると、「椿姫」は彼の好きなオペラ2位にランクインしていた。
1位は同じヴェルディーの「ドンカルロ」である。
「ドンカルロ」か、、、いや、待てよ。
私は思うのだが、ドナルドキーンが、ディアナダムラウの「椿姫」を見ていたなら、「椿姫」が1位になったのではないだろうか。