2022/02/02

The story of Blue Rose(3)名もなき実昌

私の大好きな細密画家の水野里奈さん、去年末に銀座の石川画廊で偶然会った奥田雄太さん、この2人の所属するのが飯田橋のミヅマアートギャラリーである。
午前中、四ツ谷で用事を済ませた後、私は市ヶ谷駅から外堀通りをぶらぶら歩き、10分ほどでミヅマアートギャラリーに到着。
観光専門学校、日本語学校の隣にある倉庫のような建物の2階で、旗が掲げられていたのですぐに分かった。
外階段をのぼり、非常口の扉のような重厚な扉をあけると、銀座周辺の画廊と比べると広々として気持ちのいいギャラリーであった。




名もなき実昌壁画記念写真


おお、天井の高いメインルームの壁に、かわいらしいキャラクターの描かれた巨大壁画(4×6メートルくらい)が飾られている!!

この日は、Twitterで創作活動をしていることで知られる新鋭アーティスト「名もなき実昌」さんの展示会初日であった。
ギャラリーの女性職員(Mさん)に挨拶をしたら、飛行機で福岡から来たばかりという実昌さんご本人がそこにいらっしゃいますよ、と言われた。
壁画の前に5~6人の若い男性が集まって、絵の話をしている。
一体どの人が実昌さんなのだろう、、、
待っている間、私は実昌さんのTwitterを読んでいた。
アニキャラ、ゲームキャラ、ゆるキャラといった感じのキャラクター絵画が中心であるが、単なるキャラモノではなく、ファンタジーの世界の「冒険」をイメージさせる力強い作風である。

巨大壁画の反対側の壁も見てみると、「魔界村」を彷彿とさせる少しブキミな絵が飾ってある。
私がその絵の前に立っているとMさんが隣に来たので少し話した。
私は彼女に、「これって魔界村っぽくないですか」と聞いてみた。
すると、まだ20代と思われる彼女は、「魔界村って何ですか??」と聞いてきたので、「じゃあ、ドラクエっぽくないですかね~」とあわてて聞いたら、さすがにドラゴンクエストのことは知っていた。
私は、ああ、よかった、、、と思った。
よくあるジェネレーションギャップというものであるが、男性の場合、若い女性相手にそれを感じると複雑な気分になる。
でも、あとでよく考えたら、魔界村は80年代のファミコン世代のゲームなんだよなあ、、、

その後、私は実昌さんと話すことができた。
雑誌のインタビューの前で長い時間は話せなかったのだが、意外なことに、先ほどの男性グループの中で、最もジミな服装の男性が実昌さんであった。
まじめで礼儀正しく、気難しいアーティストというよりは、物腰の柔らかな会社員の印象である。
また、彼は芸大美大の出身ではなく、10年前は普通の文系の学生だという。
話していて、どうもそれが彼のコンプレックスのようにも思えたが、くだらないことだと私は思った。

それにしても、この絵はオタク系アートという新ジャンルの始まりなのかしら??
奇想天外で非常におもしろい!!と思った。


DNPプラザブックカフェ


DNPプラザ


さて、ミヅマを出て帰りも市ヶ谷方面へ、来た道を戻った。
途中、DNPプラザ(DNPとは大日本印刷のこと)で少し休憩をとった。
1階にブックコーナー付きの広くておしゃれなカフェがあり、今年のカレンダーの展示会をしていた。
私は窓際の席でレモネードを飲んでくつろいだ。
その後は別の用事があって、総武線で新宿駅に着いたのは2時すぎになった。
新宿で用事を済ませた後、私は通行人がほとんどいない地下道を都庁方面に歩き出した。
コロナ禍になってからというもの、新宿歌舞伎町なんて感染の震源地中心地と思っていたので、こうして新宿を歩くのは本当に久しぶり。
寄り道の目的地は、去年リニューアルオープンした損保ジャパンミュージアム(SOMPO美術館)。


損保ミュージアム、絵画のゆくえ






今回の展示会は「絵画のゆくえ2022」、これは過去に新人賞「FACE」を受賞したアーティストのその後の活躍を追跡する展示会である。
しかし、この前の私もそうだったのだけど、実は私、「FACE」を狙って見に来たつもりだったのよね、、、そうしたらまたしても「絵画のゆくえ」の方だった。
パンフレットやホームページにFACE受賞作家展と書いてあり、また間違えてしまった。
まあ、仕方がない。
1時間ほどかけてギャラリーをゆっくり回って、5時近くに美術館を出た。

その後は新宿駅から地下鉄を乗り継ぎ、六本木一丁目へ。
赤坂アークヒルズのスターバックスに入った。
ここで6時まで休憩して、7時からサントリーホール(ブルーローズ)でコンサートを聞いたのだが、そのときの話は前回のブログ記事に書いたとおりである。

帰り道は溜池山王駅から銀座線で上野方面へ。
電車内で私は、ふと先ほどのブルーローズのエピソードをもう一度考えた。
薔薇は生来的に青い色素を持たないのでブルーローズは自然界に存在しない。
そこで実際には、白薔薇を染色して大変な手間をかけて青薔薇を作るようなのだが、このようなことからブルーローズは不可能への挑戦を意味するといわれる。
また、ブルーローズの所有者は願いがかなう(夢がかなう)という言い伝えもあるようだ。
ただ、これには続きがあって、場合によってはミステリアスな何か、死や破滅を示唆する場合もあるという。

私は、後者の意味があるからブルーローズにあまりいい印象を持たなかったが、改めて考えるとこの2つの意味は不可分で、良い意味と悪い意味が併存するのは理屈に合う。
より大きな願い(夢)をかなえるためには、それに見合うだけの危険を冒さなくてはならず、その実現過程では厳しい局面もあるはずだ。
もしあなたが、夢をかなえたい、ほしいものを手に入れたいと思うなら、ハイリスクハイリターンの冒険を選択する必要がある。
また、ミステリアスな何かというのは不確実性だと思う。
リスクとは一般に、危険というネガティブな意味に解釈されることがほとんどだが、投資の世界では単に不確実性という中立的意味でも使われる。
よって、私の個人的見解だが、ブルーローズにはハイリスクハイリターンの「冒険」というキーワードがふさわしい。