2021/11/09

名画の余韻

2度目のワクチン接種が終わり、緊急事態宣言も解除されたので、気軽に外出できるようになった。
先月、私は御茶ノ水の井上眼科に定期健診を受けに行ったのだが、その帰り道、約2年ぶりに四季料理「さくれ」に立ち寄った。
四季料理「さくれ」は路地裏の洒落たお気に入りの小料理屋で、リーズナブルでおいしいのだが、店構えをこの目で見るまで無事なのか疑っていた。
この他にも、私は都内のいくつかの場所で、気軽に外食をしたりお茶を飲んだりしたが、行った店は全て無事、まあ、無事でよかったですね、と思いながら黙って食べた。


四季料理さくれ


四季料理さくれ


ただ、銀座の「七賢元酒屋」だけは、無事ではなく、非常に驚いた。
緊急事態宣言中、店主がKさんからSさんに代替わりをしていたのである。
店に入ると、知らない人が厨房に立っていた。
私は嫌な予感がして、思わず、その男性をジロジロ見てしまったのだが、Kさんは無事なの?と聞くと、隠居して悠々自適です、というので、これもまた無事でよかったですね、ということである。
コロナウィルスがこれほど蔓延したなら、店が無事でも店主が客からうつされて死んでしまったとか、そういう不測の事態も考えられるからである。


七賢元酒屋


七賢元酒屋


そして夕方。
私は日本橋にも行き、小伝馬町のBNAWALLアートホテルイン東京を再訪した。
ここは1階のラウンジでビッグサイズの壁画が見られるのだが、8月に訪問した時は倉敷安耶(くらしきあーや、Aya Kurashiki)さんの壁画があった。
しかし、今はもう、彼女の壁画はなくなっており、別の画家の壁画になっていた。
6×6メートルにも及ぶ壁画用カンヴァス、そんな大きなものはもちろんこの場所に1つしかなく、彼女の展示期間が終われば、次の画家のために彼女の壁画は消される運命だった。


BNAWALLラウンジ


テーブル席でアイスコーヒーを飲んだ後、私は新しく描かれた壁画を近くで見た。
なるほど、童話や絵本の挿絵みたいで、かわいらしい作品である。
が、クラブのような大人びた雰囲気のこのラウンジには、やや子供っぽい感じもする。
私は、倉敷さんの壁画の方がよかったなあ、と思った。

それにしても、まさか、本当に、あんな素敵な壁画が消されてしまうとは!!

現場で彼女の壁画がきれいさっぱりなくなっているのを見ると、がっかりするというか何というか、私は妙に感慨深かった。
つまり、これは倉敷さんの名画の余韻の感動である。
しかし、肝心の名画がもうないのだから、会計をして帰るしかない。
私は、アイスコーヒーの代金600円を払って外に出た。
日が沈むのが早まり、もう暗かったが、斜向かいのカミサリー日本橋は相変わらず女子で混雑していた。
さて、これから用事がある。

法律的に言うと、民法には所有権絶対の法則がある。
絶対とは、その物の使用収益処分をする権限を有するのは所有者だけ、ということである。
したがって、このホテルもあの壁画用カンヴァスも、倉敷さんの所有物ではないのだから、消されても仕方がない。
そういうわけで、展示会最終日の8月5日、倉敷さんの壁画が消される直前に再度記念写真を撮りに行ったのは大正解であった。


倉敷安耶壁画記念写真


以下、追記。
その後、倉敷安耶さんは、渋谷の「WATOWA GALLERY」のコンテストで、グランプリを受賞したそうである。

2021年12月21日、私は品川に用事があって、その帰り道、宮益坂の住宅街にある「WATOWA GALLERY」に立ち寄った。
私は特定のアーティストの追っかけではないが、せっかくなので、2階の展示室で、居合わせた男性に頼んで、倉敷さんの作品とのツーショット記念写真を撮ってもらった。
今回の共同展示会の作品は、ギャラリーの関係者(審査員)の採点によりランキングされており、トップが倉敷さんということを聞いていたが、確かに彼女の点数が154.5点でトップであった(2021/12/25「WATOWA GALLERY、偶然の再会」)。


倉敷安耶、WATOWA GALLERY、グランプリ作品