2023/08/07

オペラ「ドンジョバンニ」の世界

私は月に1度、ライブコンサートにいきたいのだが、、、7月はMETのオペラを東劇のスクリーンで見てきた。
モーツアルトの名作「ドンジョバンニ」である。

このオペラでは、女好きで冷酷な貴族ドンジョバンニが、やりたい放題悪事をやってのけ、最後には、亡霊に呪い殺されてしまう。
ドンジョバンニは貴族であるから平民に殺される結末にはモンダイがある。
それで、ラストシーンはドンジョバンニの前に殺害したはずの騎士の亡霊が現われ、彼を飲み込んで地獄に突き落とすのである。






METライブビューイングオペラではいつも、幕間に出演者インタビューがある。
愛情について、独り身の貴婦人エルヴィーラ役の女性歌手がこう言っていた。

「女性たちは女たらしで強引なジョバンニに対して激怒している。これは本物の愛ではなく火遊びであると思っている。しかし、何か特別な絆を感じてしまい、彼への想いを断ち切れないでいる」

つまり、これは未練のことである。
また、別の出演者はこんなことを言っていた。

「歌劇ドンジョバンニは、恐怖や暴力に支配された冷酷な世界である。しかし、そのような世界にこそ、本当の美や芸術が表現され得るのではないか」

ううむ、なかなか奥が深い。
真の芸術は、恐怖、怒り、暴力、死、冷酷さ、悪意、不幸の世界にあるということ。

その後、私は銀座松屋へ。
ママ殿のおみやげに、地下のミルフィーユメゾンでミルフィーユを買った。
私が家を出る時、「おいしいお菓子が食べたい」とつぶやいていたからだ(私に向かってではなく)。










銀座線で末広町駅へ。
秋葉原でチョット買い物をし、その後は神田明神で商売繁盛を祈願した。
帰りは上野広小路方面に歩き、アーツ千代田の前を通りかかった。
ここは駅まで行く裏道にあたるが、いつも迷うところなのである。

アーツ千代田は廃校になった小学校の建物を改装したアートセンターである。
私は公園を横切り正面玄関を見に行った。

17時過ぎなので、もう閉まっちゃったかな??

途中、ジャケット姿のおじいさん(ホームレス?)がベンチで寝転がっていて気になった。

このおじいさん、何だか、ラストシーンのドンジョバンニみたいな服装だ、、、
ん~と、、、あれ??(*'ω'*)
やっぱり17時過ぎで閉館していた。
暑いので、公園のベンチに座って休んだ。

ベンチに座り、そばにいるホームレスのおじいさんを、ちらり眺めながら、私はドンジョバンニの劇中の出来事を思い出した。
最愛の父を失い、悲嘆にくれる美女ドンナアンナと、彼女に対して、どうしても結婚したくてプロポーズを繰り返すオッターヴィオ。
オペラ「ドンジョバンニ」は、この2人の恋愛物語でもある。

彼女は彼を悪く思っていないが、結婚の申入れを拒絶する。
今はまだそのタイミングではない、父親の死を受け入れられないというのである。
また、彼女は騎士長の娘で誇り高く、自分がつらい時、苦しい時に男性に依存したくないのである。
オッターヴィオはすぐ彼女の拒絶の真意を理解し、それ以来、何も求めなくなった。
そして、彼女の望みと幸福のために黙々と努力をするようになった。
するとそんな彼を、ドンナアンナは誠実で信頼できる男性と思うようになった。

男性には、その時々の女性の立場や心情を尊重し、俟つ(待つ)という態度が求められる。
あるいは長い時間をかけて気持ちを伝えること、それが男性の女性に対する誠実と信頼と愛情の証である。
ただ、待っている間、彼女の苦しみや悲しみについてオッターヴィオはこのように歌っている。

「あなたの苦しみは私に死を与える」




私はペンを取り出し、手帳のメモ欄を開いた。
以下、オペラ「ドンジョバンニ」の雑感。

「ドンジョバンニ」を見て、愛と恋の違いについて思うこと。
恋は明るく無邪気で浅はかである。
これに対し、愛は暗く深刻で奥深いのではないか。
恋なら夢や希望、期待を持てるが、愛だとそうはいかない。
不安や心配、恐怖を伴うだろう。
つまり、愛する相手を失うことへの不安、心配、恐怖である。
もし相手がその対象なら愛しているということなのだ。
従って、恋をするのは楽しいが、愛はつらく苦しみを伴うもの。
愛することでは幸福感、達成感が得られないかもしれない。
ただし、愛する人のそばにいられるなら十分に幸福であると思う。

う~ん、ちょっとシリアスすぎるだろうか(*'ω'*)