2023/08/02

長野ひとり旅

7月21日。
私は、東京から北陸新幹線「はくたか」に乗り、長野県上田市に行ってきた。
目的は、講談師神田織音さんの終活講談を聴くためである。

終活講談とは、神田織音さんのオリジナルのもので、高齢者向けの相続遺言、成年後見などを題材にしている。
終活講座の先生でもある私は、以前から気になっていたが、コロナ禍に依頼が激減し、現在はなかなかお披露目の機会がないという。
ゴールデンウイーク明けにそのスケジュールをきいたら、ちょっと遠いのですが7月に上田市の社会福祉協議会で~とのこと。
少し遠いけれども行ってみることにした。






上田駅からは、しなの鉄道に乗り換えるが、待ち時間が1時間以上あった。
私は、芸術文化センター「サントミューゼ」へ。

広大な施設である。
立派な美術館と音楽ホールがある。
私はアマチュアの展示会を見たりして、館内を一周したが、私以外、1組しか客がいないではないか。
館内を歩いて、人に会うと、職員だったり、掃除のおばさんだったり、展示会のスタッフだったりした。
何だか、もったいない気がした。




上田駅~しなの鉄道~大屋駅~バス~丸子~丸子文化会館。

私は終活講座の「先生」だが、今回は、神田さんの終活講座に「生徒」として出席する。
開始前の控室を訪問し、神田さんにご挨拶をした。
2月の曳舟の墨亭での独演会以来の顔合わせで、控室から顔を出した彼女は、あら、本当に来たのね、、、という顔をしていた。

その後は、お昼を買いにコンビニまで往復し、歩きながら、本当に田舎だなあ、、、と思った。
開場時間を過ぎるとようやく、エントランスホールに、高齢のお客さんが増えてきた。




ここは、高齢者中心の世界である。
よって、病院と介護施設が主要な雇用を生むのだ。
神田さんの終活講談の主催は社会福祉協議会である。
聴衆はほぼ高齢者だが、スタッフは若い女性が意外と多かった。

大通りの商店街は、鳴りを潜め、営業しているのかさえ怪しかったが。
ここにいると、日本という国は、もはやまともな経済活動がなく福祉活動だけが栄える「日の沈む国」と思える。




神田さんの講談は、伝統的講談1本と、遺言に関する新講談3本で、計4本、1時間半に及んだ。
私が思っていたよりは、むずかしかったが、遺言の重要性が端的に伝わる内容で、そこが見事だった。

帰り道、私は、バスの停留所で、女子高生2人組の雑談を聞いた。
私の隣でいろいろ世間話をしていて、それが非常に興味深かった。
彼女たちは明るかったが、自分の将来が暗いことも話していた。

「将来、何になるの?」
「私、家事が好きだから、家政婦かな」
「え~、家政婦になるの?」
「でも・・・知らない人の家の家事をするのは、いやだよね」

彼女たちの会話を横で聞いていると、要するに彼女たちは、田舎に残って、介護施設の仕事にはつきたくないということなのだ。
それなら彼女たちは卒業後、まず、東京のキャバクラなどで水商売でもして大いに稼げばいい。
考えてみると、介護施設でじいさんを風呂に入れたりする場合、介護職だって、水商売的なことをするわけである。
実際、そういうところでセクハラのトラブルなど、ありそうな話。。。給料は激安、重労働、深夜勤務もある。

ある日、高校を出たばかりの女の子が、老人ばかりの日の沈むこの街を脱出し、東京に出る。
地下アイドルやアーティストや漫画家など、自分の夢を追って生きる。
副業は、水商売。
インスタグラムで、活動開始を宣言。

何やら、それは、おもしろそうな人生である。
また、それは彼女たちの正当な権利行使のような気がするのだ。
自分を真面目な価値観でがんじがらめにして生きるのは、これからの時代、オトナたちに、いいように利用されるだけで、愚かな選択ではないだろうか。
家や他人や社会のことなど考えず、身勝手に生きる。
女性の自由と権利は保障されているのだから、あとは行動あるのみ。

大屋駅でバスをおりて、しなの鉄道に乗り換えた。
が、定刻通り電車が来ない。
おかしいなと思っていたら、信号の故障で電車が遅延しており~とアナウンスがあった。
1時間に1本の過疎ダイヤでも、信号はちゃんと故障するのだ。
人間も、田舎でゆるい暮らしをしても、東京で多忙な暮らしをしても、同じように年を取って死ぬだろう。




私は大屋駅で、かれこれ1時間以上待たされた。
その間、私と一緒に駅で電車待ちをしていたのは、スマホに夢中の女子高生、独り言をつぶやいたり大音量で音楽を聴いている何人かの障害者たち、暑くてグッタリしている何人かの高齢者たちであった。
女子高生は彼らの存在を気にもとめず、インスタグラムに夢中になっていた。
私は、彼女は元気だなあ、と思った。
人間は元気なら、元気な人と一緒にいる、活況な場所にいる、そのほうがいいと私は思う。






上田駅では、新幹線の時間まで、池波正太郎記念館へ。
作家の池波正太郎は、鬼平犯科帳で有名である。
記念館まで緩い坂の大通りを15分ほど歩いたが、途中、資格の専門学校があった。
案内掲示板を見ると、県の公務員、警察、自衛隊、税務署、医療介護関連・・・景気に無関係の職種が並んでいた。

上田駅では、帰りの新幹線を1本間違えてしまい、佐久平駅で下車した。
到着時間はちょうど18時で、私は駅員に事情を話し、次の新幹線を待つことにした。
駅構内を散歩すると、佐久平ハーフマラソンのチラシが掲示されており、私の目に留まった。




マラソン大会か。
自分を試すために参加してみようかな。
早速、QRコードを読み込んで、ウェブサイトを見た。

待合所で、ワイン友達とlineをして待った。
私がマラソン大会の話をすると、上田のシャトーメルシャン椀子ワイナリーがいいところだよ、といわれた。
そうだな、、、次に来るときは、苦しいハーフマラソン大会ではなく、楽しいワイナリーのほうだ、と思った。

ただ、最近は仕事が多忙で、日課のジョギングをしなくなっていた。
運動不足だが、夏は暑いから、冬は寒いからといって、運動はさぼることができる。
明日からぼちぼち、日課のジョギングくらいは始めよう。