2019/02/15

改元とは縁起の悪い話である

今年は改元されるので、元号について調べている。
今日は江戸東京博物館主催の元号の講演を、両国まで行って聞いてきた。
近松鴻二元国士舘大学教授が講師で、2月1日と2月15日の2回に分け合計3時間以上に及ぶ長丁場の講演であった。

そもそも日本の元号は中国に由来する。
しかし、いまはもう、元祖の中国でさえ元号など使っていない。
そのため、日本国内には元号廃止論も根強いが、近松教授は日本の伝統だから元号は廃止すべきでない、と言っていた。
しかし、元号を残すことでどのようなメリットがあるのかという質問に対しては、説得力のある答えはなく、「実際、何のメリットもありませんがね」などと教授は平然として言うのであった。
そして、「元号表記の方が心が和むからいいじゃないですか」と、お茶目なことも言っていた。

この教授、講義は別に楽しくないのだが、どことなくユーモアがある。
私は居眠りもせず、おもしろがって聞いていた。
しかし教授、心が和むかどうかは人それぞれではないのかな、と思うのだ。
例えば会社で日々事務に追われる一般庶民にとっては、元号などめんどうくさいだけで全然心が和まない。
私は、単に西暦のみとする方が簡明で良いと思う。
ただし、元号は日本の天皇制と深く関連するため、日本が天皇制である限り、元号は廃止されないと思われる。

さて、日本人の多くは知らないと思うが、改元自体はまったくおめでたい話ではない。
改元とは非常に縁起の悪い話なのである。
改元をめぐっては、日本も元祖中国も、縁起の悪い話が山ほどある。
昔の政府は、改元を早めたり、改元を先送りしたこともあったほどなのだ。
ちなみに、明治維新前は「一天皇一元号制度」ではなく、天皇在位中に何度も改元が可能であった。
最も多く改元をしたのは後醍醐天皇である。
その次が、明治天皇の1代前の孝明天皇である。
後醍醐天皇も孝明天皇も、時代の転換期、乱世の時の天皇であり、その当時、あまりにも縁起の悪いことが立て続けに起こるので、改元を早めたというふうにも思われる。
まあ、今年の改元以降、悪いことが立て続けに起きなければよいのだが、どうだろう。


アンティークカフェウール倶楽部


アンティークカフェウール倶楽部


講演後、両国駅近くのアンティークカフェウール倶楽部に行き、ケーキセットを食べた。
両国に来た時にはたいていここに寄り道するのだが、おいしいコーヒーとザッハトルテ、おしゃれなアンティークの家具と雑貨が魅力の店である。
今日は、筒井康隆と桂米朝の対談集「笑いの世界」をカバンに入れていた。
ザッハトルテを味わいながら、私は2人のコメディー論を読んだ。


筒井康隆桂米朝「笑いの世界」


ギャグが通じないぐらい悲しいことはない。記者のみなさんの前で悪いけれども、例えば何かの賞をもらったり、あるいは凄いこと何かやったりすると、記者が「ご感想は」と言うでしょう。あのときの陳腐な慣用句で、「嬉しくないといえば嘘になりますが」というのがある。ぼくは、あれ大嫌いなんですよ。この前それ聞かれたんでね~「嬉しいと言えば嘘になりますが」と言うたらね、「嬉しくないのはなぜですか」と確認してくる。
(対談集「笑いの世界」より)

食後、私はテーブル席を離れ、店内のインテリアを見てまわった。
ホラー映画にも出てきそうな不気味な人形、マリリンモンローのような人形、小便小僧など、ほかにも小物入れに白人女性の写真が入っていた。
映画のワンシーンと思われるが、彼女は誰だろう。
いや、むしろ写真の端の男性に見覚えがあるが、こちらも思い出せない。


アンティークカフェウール倶楽部のインテリア


アンティークカフェウール倶楽部のインテリア


アンティークカフェウール倶楽部のインテリア


アンティークカフェウール倶楽部のインテリア


それにしても、ここにある家具も雑貨も、じっくり眺めると何ともビミョウだなあ。
ここにインテリアとして置いてあるとおしゃれなアンティーク品とも思えるが、じっくり眺めると、ただのがらくたに見えてきた。

おや、誰だか知らないおじさんのお茶目な声が聞こえる。

がらくたを飾ってどんなメリットがあるのかというと、実際、何のメリットもありませんがね、たとえがらくたでも心が和むからいいじゃないですか。
そうだね、教授、元号もアンティークの飾り品のようなものなのかな、と私は思ったのだった。