2023/12/05

サロメ、あるいは、なぞうさ?

2023年12月から、今シーズンのMETライブビューイングオペラがスタートした。
しかし、上映スケジュールを見ると、2024年3月まで、私の見たいオペラがなかった。

今回は、久しぶりにオペラのことを書こうと思う。

そういえば9月、私は銀座の東劇で、METライブビューイングオペラを2本見ていた。
1本は、こないだブログに書いたプッチーニの「トゥーランドット」である。
もう1本は、これから取り上げるリヒャルトシュトラウスの「サロメ」である。
これは、オスカーワイルドの戯曲をもとにしたものだが、原作とはチョット違うようだ。

上映が始まると最初、「愛の謎は、死の謎よりも深い」という意味深な言葉が、ナビゲーターの女性から提示された。




確かに彼女の言うとおりである。
第一に、「サロメ」は”愛と死の物語”である。
しかし第二に、この物語は、”サロメの満足の物語”でもある、と私は思う。
彼女は潜在的に愛する者との死を望んで生きているが、ちょうどいい相手の男(預言者ヨカナーン)を見つけたのだ。

第三に、「サロメ」の物語は、”オトナが子供に害悪を与える話”だと思う。
美貌を極めたサロメはその肉体をさらし、黙って踊るだけでいい。
王を虜にし、欲しいものを与えるといわせてしまう。
しかし、預言者ヨカナーン、あるいは他の宗教家たち(劇中で何人も登場する)、彼らはサロメとは対照的存在である。
彼らはオトナであり、魅力がない老人たちであるが、それゆえに、もっともなことや正しいことを喋る必要がある、正義面をする必要がある。
そして、ほどよくバランスを取っているかに見える人物が王である。
これはこれで、その言動と享楽主義を見ていると、どこかバカげている。
いずれも極端なキャラクターで違和感がある。

「サロメ」では、王が最も優れたバランス感覚と秩序の精神と人間的魅力を発揮している。
いつの時代も民衆は愚かで、ほどほどの人物が王になる、ということではないだろうか。
ドラマの最後で、王は娘のサロメを殺すように命じ、舞台から立ち去る。
これは王の政治的決断である。
第四に「サロメ」の物語は、”政治家が決断をして愚かな民衆の騒動をおさめる話”だと思う。

「サロメ」は2時間ほどの短編オペラで、1幕だけで終わった。






後日、タルトタタンを初めて食べた。
ずいぶん赤いので、あんずジャムでできているのか、と思い、支払の時、店員に聞くと、やはり、リンゴジャムだった。

私は、手帳のメモ欄を開き、このようなことを書き込んだ。

もしサロメのように異常に美しく、異常に淫乱で、異常に女王様ぶっていて、異常に子供っぽい女性がいるとしたら・・・それは扱いにくくてもイイ女だ。
私は彼女のことを愛してしまうかもしれない。
その場合、彼女の秘密や過去が気になっても詮索するべきではない。
理解者とは、彼女の内面や過去を何でもよく知っている人、ではない。
むしろ彼女に関する本当のことは、ぜんぜん知らなくたっていいが、彼女のことは何でも受け入れる精神を持つ、ということだ。

続いて、「サロメ」のあらすじについてコメント。

リヒャルトシュトラウスの「サロメ」とは違い、ヨカナーンを助けようとする筋の、他のサロメもある。
むしろこちらが彼女の心情に照らしてオーソドックス。
いずれにせよ、本当は、殺すつもりはない。
彼女は権力者により自由と権利を制限されていて、イライラしている。
彼女の殺意の対象は、むしろ権力者の王の方に向けられているが、実現できないだけではないか。
王(父親)はサロメを愛しており、また、ヨカナーンを幽閉している。
2人とも王の権力下で身動きがとれない。

もっとも、いまは自由と人権の時代である。
移動も簡単にできるし、住まいも余っているし、至急で何でも手に入る。
現代版の「サロメ」なら、意中の男性を殺すこともなければ、助ける必要もないだろう。
例えばの話、メールや電話で呼び出して、どこかで逢引きをして、駆け落ちも容易にできるのだから。
もし私が現代版の「サロメ」のシナリオを書くとするなら、オチは駆け落ちでハッピーエンドかなんかでいいと思う。

さらに、タルトタタンのジャムについてコメント。

私はタルトタタンを食べながら、あんずジャムではなく、ローズジャムかもしれないとも思った。
ローズジャム、、、それはレアなジャムである。
去年3月、銀座のローズギャラリーという花屋で、花を贈るついでにローズジャムも買ったのだが、最初は自分で食べようとして買った。
しかし、花屋を出た後、近くの喫茶店に入り、そこでサラダを食べているうち、考えが変わった。








喫茶店を出ると、私は花屋まで戻り、店員に、やっぱりこのローズジャムは花と一緒に贈ってほしい、と頼んだのだった。
当日配達で、時間もなかったため、私は花屋の店員に足代を払い、女性店員が直接、手渡しで届けてくれることになった。
後日、受け取った相手の反応をメールで教えてもらった。
ご指名どおり、本人に直接渡したが、とても喜んでいた、花屋としてのプライドに賭けてそれは本当である、との返事であった。

帰宅後、私は書棚から去年の手帳を取り出して見た。
去年3月、私は喫茶店で手帳のメモ欄に、このようなことを書き込んでいた。

家に帰ると、私はサロメにローズジャムをプレゼントする。
サロメはご機嫌になり、朝食の食パンに付けるとおいしそうだと言って、冷蔵庫にしまう。
しかし、サロメは食いしん坊で、夜中に寝ぼけて、冷蔵庫をあけて、つまみ食いをする習慣がある。
早速その日の夜中、サロメはローズジャムをすべて、なめてしまう。
翌朝起きると、食パンに付けるローズジャムがなくなっている。
自分で食べておきながら、サロメはそのことにひどく腹を立て、私に対し、ローズジャムのおかわりを断固要求してくる。
彼女のワガママに手を焼いた私は、直ちに着替え、朝食抜きで、急いで家を出る。
銀座のローズギャラリーの開店と同時に、ローズジャムを買い占める。
そのことを報告するとサロメは機嫌を直し、私は事なきを得る。

私は、スマホを指でなぞり、Googleフォトのアーカイブをたどった。
ちなみにこれは去年9月に見たアート作品だが、柏市役所の隣のラコルタ柏の雑貨屋の展示スペースで見たものである。
「なぞうさ」というようだが、なかなかユニークなキャラクターである。

う~ん・・・「なぞうさ」ねえ、、、(*'ω'*)