2022/07/03

ファミリーレストランの値上げの是非

テレビから毎日のように値上げのニュースが流れる。
そのとき、コメンテーターたちが値上げの是非を討論している。

我が国は資本主義だ。
コストが上がったら値上げをすべきだ。
値上げをしないと企業の利益が減る。
労働者の賃金が下がる。

だから素直に値上げをすればいいという者がいる。
また、品質を落としたり、量を減らしたりして値上げを回避すると、消費者は疑心暗鬼になると批判する者がいる。
アナリストの友人は、さっさと値上げをすればいいのに、マスコミが値上げを非難するのはけしからん、と憤っていた。

つまり、長い長いデフレ不況が終わらないのは、こういうときに値上げをみんなでためらうからなのだ。
確かに理論的には彼の言うとおりである。
正直言うと私も、金融経済の専門家として値上げ許容派であった。
しかし私は最近の出来事で、ほぼ値上げ否定派に変わった。

6月のある日。
私はうちのママ殿と一緒にファミリーレストランに行った。
昼間に来客があり、その対応でひどく疲れたので夕食を作る気力がない、外食で済ませたいとママ殿は言った。
コロナ禍に、全くといっていいほど外食をしていなかった私たち。
2人で食べに行くなんていつ以来だろう、と話した。
ええと、この前は確か、コロナが落ち着いたときに、2人でデパートに買い物へ行き、その帰りに銀座アスターで食べたはず。

「それ以来じゃないの??」
「違います。銀座アスターではありません。この前は、プリンスホテルです。」
「いやいや、プリンスホテルは、ものすご~~~く前ですよ。」
「いいえ、プリンスホテルです。私の記憶に、間違いはないのよ。」

争っても仕方がないのでプリンスホテルということになった。
しかし、スマホの写真を見返すと、2020年10月の銀座アスターだった。
ちょうどその頃、私はワインの資格試験に合格し、お祝いのため、2人で銀座アスターに食べにいったからよく覚えているのだ。


銀座アスター


あんみつ先生のママ殿
(銀座アスターのシーフードヌードルをすするママ殿)


今日は何が食べたいか聞くと、ハンバーグステーキが食べたいという。
それなら、そこらのファミレスで食べればいい。
夕方、大通り沿いのファミレスに入店した。
私はファミレスで、ドリンクバーにスイーツを注文することはあるが、食事をするのは久しぶりだった。

そういえば学生時代、友達と帰りによく食べにいき、長い時間お喋りをしたなあ。
会社員時代は節約のため、ファミレスのランチセットをよく食べていた。
誰かとファミレスで別れ話をして、別れたような、別れなかったような、、、

私たちはテーブル席に座った。
ママ殿は疲れて食欲がないといい、大根おろしのさっぱり和風ハンバーグセットを頼んだ。
暑いので私も食欲がなく、同じものを頼んだ。
注文用ディスプレイの合計額を見ると、2人で2200円程度。
夕食でハンバーグセットでこの値段なら妥当か。
15分ほどで料理が届き、その後は話しながら食べた。




途中、私はスープバーにおかわりを取りにいったが、3人の幼い子供とママさんが、テーブル席で楽しそうに食べているのを見かけた。
席に戻った私はママ殿に言った。

「今度はトマトスープにしました。中華スープはいまいちでしたから。」
「このトマトスープ、なかなかおいしいわ。コンソメ入りで飲みやすいし。」
「これなら家で自分で作れそう。」
「カットトマトを使えばあなたでも簡単ね。」
「コンソメは冷蔵庫のどこにありましたっけ?」
「鶏がらスープの素の入れ物の左隣です。」
「ああ、あそこね。今度ランチの時に作ってみます。」
「頑張ってください。」

さて、値上げの是非の話に戻ろう。
私は値上げ許容派だったのに、ここにいるうち、ほぼ値上げ否定派となった。
お店は値上げをして何を維持したいのか。
客に提供する商品とサービスの質を維持したいのだ。
このファミレスの場合、例えば私たちの食べるハンバーグセットの品質だ。
しかし、このファミレスで私たちは、料理の味にどこまでこだわっているかというと、実はそれほどでもないことに気付いた。
プリンスホテルや銀座アスターは値上げする方がいいかもしれないが、ファミレスは、できるだけ値上げしない方がいい。
あのテーブル席の親子は、値上げではなく、品質の妥協の方を望んでいると思うのだ。

それにしても今年の夏はひどい物価高騰である。
たまにファミレスに入店したときは、若い頃を懐かしむこともあるが、若い頃の思い出は良いものばかり。
昔は何をしても楽しかった。
何を食べても満足だった。
私は、食事というのは、何を食べるかより誰と食べるかにこそ真の価値があるのだと思う。
この日の私は、その価値を少しでも安く提供するファミレスに感謝をしたのだった。


アロスティチーニ、サイゼリヤ


アロスティチーニ、サイゼリヤ


最後に。
ワイン好きの私は、串刺しのラム肉(アロスティチーニ)がとてもおいしいので、最近サイゼリヤで頻繁に食べている。
これは、赤ワインとの相性が抜群にいい。
ただ、せっかくアロスティチーニがこんなにおいしいのだから、サイゼリアのワインリストには、もう少し選択肢があってもいいのではないかと思う。
高価格帯のワインがあることで、低価格のメニューの価格の維持もしやすくなる、と私は思うのだが。

そうそう、思い出した!!

学生時代、友達と帰りによく食べにいき、長い時間お喋りをしたなあ。
会社員時代は節約のため、ファミレスのランチセットをよく食べていた。
誰かとファミレスで別れ話をして、別れたような、別れなかったような、、、

そのファミレス、実はいずれも、サイゼリヤである。