2019/05/29

不思議な才覚!?

今日はサロン経営者のKさんと会う約束をしている。
30代なかばのKさんは、起業して10年足らずだが、首都圏に数店舗のサロンを持っている。
Kさんが転居してから疎遠となっていたが、久しぶりに連絡を取り、秋葉原のカフェで会った。
昼過ぎ、Kさんは以前と変わらない明るい様子で待ち合わせ場所に現れた。
2人で路地裏のクラシカルなカフェへ。
私たちは一番安い250円のブレンドコーヒーを注文した。

Kさんはトレンドに敏感で、したたかな男である。
サロン経営者ということもあり、不真面目な情報にも通じており、彼と話すのは刺激的で面白い。
経営実務も熟知していて経営者としてのぶっちゃけ話もまた面白い。
男どうし1~2時間ほど話したが、サロン経営の課題、実践的な経営論、そして株式投資の話題にも及んだ。

驚いたことに、Kさんはいま、株式投資に夢中のようである。
もともとKさんと私は、2018年3月、パンローリング主催の投資戦略フェアの投資家交流会で知り合った。
私は株主優待目的でディズニーランドの株式を少し保有する程度の株主であるが、だいたい、このディズニーの株だって、当時お付き合いしていた女性がディズニーランドマニアだったから買ったものなのだ。
Kさんもまた、サロンの経営で忙しいから、私と同じく、株式投資は趣味程度といっていたはず。
しかし詳しく話を聞くと、去年からテクニカル分析を勉強して儲かるようになったという。
私はKさんからこう言われた。

「あなたって、テクニカル分析に詳しいでしょう。投資顧問でも開業すれば儲かるのに。」
「おお、なるほど!! でも、本当に儲かるのかなあ。」
「顧問料で儲かるよ。ただし、ハズしたら大クレームだけどね(笑)」
「あはは、そりゃそうだ。でも、1回ハズれたくらいでクレームを言われるのはいやだね、、、」
「まあ、電話でぼくに怒鳴られるのがいやなら、やめたほうがいい。」

実際、彼は以前、投資顧問を利用したことがあるそうだ。
しかし、上がる話を信じて言う通りに買ったら下がって大損をした、と言っていた。
ただ彼に助言をした投資顧問は(助言報酬で)大いに儲かっているから、彼にしてみれば投資顧問はおいしい仕事なのだろう。

彼はラクして金を稼ぐ方法をつねに考えている。
しかし、いつどうなるか分からない自営業者(会社経営者)なら、それは当然のことだ。
確かに私たちは公務員や会社員のようにお気楽では生き残れない。

彼と話していると実に勉強になるし、時に目からウロコの発想を聞くこともある。
彼は不思議な才覚(嗅覚?)を持っているなあ、と感心するが、私は彼のような才覚を持ち合わせていない。
なので、実は私は年下の彼のことをこっそり尊敬している。

ただ、この違いはどうもお互いの育ちの違いによるものと思われるのである。
そのため、私はこれまでも、彼と仲良くなるが違う人間だと痛感せざるを得ない場面が何度かあって、つまらないことで喧嘩をして疎遠になることもあった。
実を言うと、彼の転居前から少し疎遠だった。

ということで、この日は少々気まずいけれども、Kさんとの仲直りができてよかった。


刀剣博物館






Kさんと別れた後は、秋葉原駅から両国駅へ。
両国国技館の先の刀剣博物館へ行った。
今回は「日本刀の見方」というビギナー向けの企画展。
私は日本刀のビギナーなので、ちょっと見てみたかったのだ。
最近、日本刀が女性のあいだで密かなブームとなっているらしい。

確かに、展示室には熱心に日本刀を眺める若い女性が1人いたので、若い女性が1人でもいればブームなのかもしれない。
マンガやライトノベルは歴史ものも多く、それがきっかけで女性が日本刀にハマることも多いようだ。
今日はビギナー向けの展示でありながら、国宝と重要文化財の日本刀が並んで展示されていた。
これはちょっとすごいものを見たな、と私は満足して博物館を出た。




慶應MCC夕学五十講の柴山和久の講演会


そういえば、きのうは丸の内の慶應MCCで夕学五十講があり、ウェルスナビ株式会社の柴山和久代表取締役の講演を聞いたのだ。
「テクノロジーを活用した資産運用の民主化」というタイトルで、小口の個人投資家がウェルスナビに資産を預けると、AIが自動運用して資産を増やしてくれるという。
柴山氏はその仕組みを見事な語り口で説明したが、その話術が、私にも夢のような話を実現可能と思わせた。
ただ、あとで冷静になるとそう簡単にうまくいくのだろうか、とも思う。
結局、商売は夢のような話と、スマートな話術で集客するもの。
控えめな話を真面目にしても、お客さんは財布をぶら下げて寄っては来ない。
だから、お金儲けに興味のあるお客さんを集客するためにも、投資顧問の集客方法は、別にこれでいいのだと思う。

講演会が終わり、私はいつものように会場を出た。
講演会場は丸ビルの7階で、ロビーの壁には今月の作品が展示されていた。
どんな写真かと思い壁を見ると、一面真っ黒の不吉な版画だった。
黒くて分からないので、壁に近づいてタイトルを見た。


慶應MCC会場入口の展示作品


慶應MCC会場入口の展示作品


アッツ島玉砕、、、

角度を変えて眺めると、確かに日本軍の玉砕のさまが浮かんだ。
アッツ島玉砕、それはまだ敗戦ムードなどなかった1943年5月、日本軍最初の玉砕である。
アッツ島玉砕をもって、対米戦争はほぼ負けが確定したようなものだと思うが、日本の敗戦はアッツ島玉砕の日から2年3か月もあとのことだった。
2年3ヶ月ものあいだ、日本政府は何をしていたのだろうか、、、まあ、これと似たような愚行を繰り返していたのだ。

そういえば、どこかの美術館で見たぞ。
確か藤田嗣治もアッツ島玉砕の絵を描いていたと思う。
当時の芸術家たちは、日本の暗い未来を予見し、衝動的に戦争作品を描かずにはいられなかったのだろう。

最初、何でこんなところにこんな作品を飾るのか、とも思った。
が、他方で私は、きれいごとばかりの現代日本社会を、委縮したキモチ悪い社会だと感じている。
全然いやされない作品、不吉な作品、恐い作品。
こうして当たり前に飾ってあるほうが、ある意味、風通しのよい健全な世の中だと思う。
そういう意味では、不真面目な情報に通じていてお金儲けのことばかり考えているサロンの男は、重要なキャラクターなのだ。
また、AIが自動運用して資産を増やしてくれるという甘い話をする投資顧問会社の社長も、どんどん相場で活躍して儲ければいいと思う。