2022/07/01

Between Debt and the Devil(2)フリーランチはない



前回のブログ記事で登場した「債務さもなくば悪魔(Between Debt and the Devil)」というヘリコプターマネーの専門書。
著者のアデアターナー(Adair Turner)はイギリスの元金融サービス機構(FSA)長官、ヘリコプターマネーの権威、イギリスを破綻させたヘッジファンドマネージャーのジョージソロスの仲間である(≧∇≦)キャー,ステキイイ!!


(債務さもなくば悪魔(Between Debt and the Devil)表紙裏より)


すでに述べたとおり、ヘリコプターマネー(helicopter money)は劇薬そのもので、財政規律を害し、中央銀行のバランスシートが債務超過となるため、中央銀行及びその発行する貨幣に対する信認が損なわれてしまう。
また、アベノミクス以降、日本銀行が金融緩和(QE)をしており、それがまさにヘリコプターマネーであるということもすでに述べた。
ヘリマネの典型例は、コロナ禍の給付金や支援金、まるでヘリコプターで上空から札束をばらまくような、太っ腹で無節操なバラマキの経済対策だった。
その経済効果は極めて大きく、日本経済は延命したのだ!!






しかし、世の中、こういう格言(神様の言葉)がある。

「ただより高い物はない」
欧米では、「フリーランチはない」

したがって、ヘリコプターマネーで日本経済は延命ができたものの、必ず、あとで請求書が来て、高くつくはずなのである。
つまり、ヘリマネが劇薬といわれるからには、想像以上の恐ろしい副作用が伴う、というのが道理なのである。
そこで、ヘリマネの副作用、つまり通貨の価値の毀損による制御不能のインフレを懸念して反対をする者がいるけれども、他方で、そこまでのインフレはそう簡単に起きるものではないというのも事実である。
しかし、床の上に油をまき散らしても直ちに火災になるわけではないから大丈夫ですよ、などという子供だましの屁理屈を聞いて、誰が納得して安心するというのか。

以下は、6月第3週終了時点のチャートである。


■⽇経平均株価 
(出典・YahooFinance) 

6⽉第3週の下落により、6月第4週以降は、①〜④〜⑤と下落基調が継続することが想定される。
25000円を割り込み、④〜⑤に⼊ると、⽇銀の⾦融緩和以来の⻑期の上昇相場が終了したと判断してもよいだろう。
また、その場合は、相場が⼤きく動き、総崩れとなる可能性もある。
もし③に⼊ることがあるとすれば早期の20000円割れも視野に⼊る。 
かたや、25000円よりも上で相場が推移し、④〜②に流れ着いた場合、いったんは下げ⽌まったと判断してよいだろう。
ただそれでも当⾯は、②から再度下落が試されることが想定される。
少なくとも2本の右肩下がりの川の中に相場がある限り、下落基調が継続しているとみなす⽅がよいだろう。

まあ、これは、今日明日の危機をあおるような話ではなく、中長期の冷徹な相場予測である。

ここで重要なのは25000円である。
私は、25000円を割ると強い売りシグナルだと思うのだが、しかしそれまではまだ粘っている、ギリギリ大丈夫、、、というふうに楽観的に考えることもできる。
今回は、もう少し長いチャートを見てみよう。


■日経平均株価(2022年6月末)
(出典・YahooFinance) 


(拡大図・出典・YahooFinance) 


なぜギリギリ大丈夫と考えられるのかというと、2本の赤い平行線の中に相場がある限り、10年来の長期の上昇トレンドが継続しているとも考えられるからである。
ここを、日本の公的な買い圧力(いわゆるPKO、price keeping operation)が死守するということなら、ギリギリ大丈夫、下げ止まり、今後は反転上昇すると思う。
しかし、ウクライナ戦争、不穏な世界情勢、インフレ、世界的な金融引き締め、そういう危険な流れの中で、大丈夫ではないかもしれないと不安に思うのは私だけではないはずだ。

以下、これもまた前回のブログ記事より。

では、他の2冊の名著(「バブルの歴史」「大暴落1929年」)が警告するように、バブルは崩壊する、株価は大暴落するのか。
いや、専門家のあいだでは、今回のバブルはそう簡単には終わらない(終われない)と考えられている。
なぜなら、上空のヘリコプターから札束をばらまいている最中に、株価が暴落してしまったら、それこそ日本経済の破綻(!!)だからである。

つまり、「特攻隊」は戻れない、最近の政治のニュースでも、「一億総株主」という言葉が流れたが、そういうことなのである(ちなみに戦時中の政府は「一億総火の玉」と言っていた)。
もっとも、ヘリコプターマネーといっても、これ以上何をばらまくのかという感じもする。
なので、これ以上のバブル相場は想定しにくいと私は思う。

さて、この「特攻隊」の飛行機は現在までどのように飛んでいるのかというと、実は、この2本の赤い平行線の中を、蛇行運転しているようなのである。
どこに向かって特攻しているのかというと、もちろん、バブル期の最高値39000円あたりである。
しかし、39000円まで燃料(金融緩和)が続くのか、ということがいま問題となっている。
もしこの角度で飛べなくなってしまうと、どこの誰に撃墜されたかは相場では知るよしもないが、墜落したようにも見える。

というわけで、赤い上昇トレンドライン(2本の赤い平行線の下のほうの線のこと)をブレイクアウトしたときは、撃墜されたのだから単に売り、25000円割れでもっと売り、一気にリスク回避の流れとなることが想定される。
その場合、特攻隊の飛行機は、白抜きの赤い矢印のように黒い四角の中へ「墜落」していき、青丸がアベノミクス相場の2番天井を形成してしまいそうだ。
7月以降、13ヶ月移動平均×21ヶ月移動平均がデッドクロス(Dead Cross)しかけており、下落トレンドがさらに強まる恐れもある。
私は2022年後半の相場はこのデッドクロスの流れでの下落が試されると予測する。
世界情勢のあやで、何が起こるか分からないではないか。
赤い矢印のTargetの周辺までの急落にも要注意。

なお、このチャートを眺め、思い返すと、第一次特攻隊は、2013年から2015年まで、もっと急角度で威勢よく飛ぶ予定だったのではないか、と思う(Channel Lineと書かれている周辺)。
しかし、チャートから明らかなように、2015年の消費税増税が、第一次特攻隊を撃墜してしまったようである。
ああ、これは残念(*'ω'*)

これでアベノミクスは事実上失敗した。
その後、日経平均株価は長期低迷に陥り、ほぼ横ばいとなった。
そのあいだ、世界の株式はどこもかしこも上昇したが、日本だけが上がらなかった。
確かに、消費税増税は社会保障の維持のためにはやむを得ないとは思うが、大切な仲間を撃墜してしまうとは。

では、次の第二次特攻隊は、どうなる運命なのか??
特攻隊とは決死隊であり、死を覚悟して撃墜されにいくわけである。
だから、この相場も、撃墜の宿命が待ち受けているようにも思える。
しかし、特攻隊員だって命は惜しいし、必ず死ぬとは限らない。
以前、本で読んだことがあるのだ。
ゼロ戦に爆弾を積み過ぎた特攻隊員が、途中で燃料切れになり、どこかの島に不時着して生き残ったというエピソードを。
しかし、万が一暴落などが起きたとしても、欧米のヘッジファンドのせいにするのは、よしましょう!!
投資は自己責任です(*'ω'*)チャリーン!!


■日経平均株価(月足MACD・2022年6月末)
(出典・YahooFinance)




■日経平均株価(2022年3月・赤丸のゾーンは強い下落シグナル)