2019/11/01

事業計画書の書き方(3)





前回の続きである。

④-1 サービス商品そのもの
サービス商品そのものの特徴、強み、革新性、使われているテクノロジーの説明等である。
テクノロジー系のVB(投資先ベンチャー企業)のアピールポイントはまさにここである。
だが、斬新なビジネスモデルは不確定要素で、その評価は困難である。
通常、VBは思い入れがあり、資金がほしいからこの点について強気、VBは思い入れがなく、資金を出す方だから弱気である。
ここで重要な判断のポイントは、サマリーで書いた「事業ドメイン」との関係である。
分かりやすくいうと、VCは、そのVBの新しい家電商品が、家電量販店のどこの売場のどの辺の棚に置かれるのかをイメージする。
そうすると、たとえ単品で優れた性能があり、前代未聞のレッドオーシャンな技術が搭載されているとしても、売場の棚で他の類似商品と競争して本当に勝てる見込みがあるのかが問題となる。
そして、その具体的な見込みのことを「商品の強み」というべきなのである。

④-2 市場
市場には需要があるのか、である。
demandあるいはneedsということだが、これはようするに、人々に興味を持たれそうかという点に帰する。
まあ、少なくとも、起業家自身がほしくてたまらない魅力的な商品でなくてはなるまい。
しかし、画期的な商品が市場で認知され、市場で興味を持たれ、市場で購買される、この一連のプロセスが有機的に機能して初めて商売が成り立つのであり、認知方法としてのマーケティングはもちろんのこと、マーケットを作れるだけの下地(興味)が必要なのである。

まず、市場規模を近年の傾向もふまえて分析する必要がある。
もちろん、市場が成長拡大トレンドであることが好ましい(VBも成長しやすい)。
しかし、市場がピークアウトしていたり、衰退縮小トレンドにあっても、それはそれでかまわない。
なぜなら、近い将来その市場がなくなってしまうわけではなく、他社の事業やその事業モデルの合理化がビジネスとしての価値を持つ場合もあるからである。
まあ、ビジネスチャンスというのは、どこにでもあるものなのだ。

さて、市場分析はVBにとって自己分析ではない。
VBは、自社の商品サービスの分析についてはよくやっているが、それは自分自身の問題だから当然のことだ。
これに対し、需要、人々の興味、ターゲット顧客、マーケット、市場規模、ライバルについては、往々にしてVBは分析不足である。
こちらは自分自身の周囲の環境の問題であり、あまり熱心になれないのもやむを得ない。
しかし私は思うが、VC側は後者の方を気にするだろう。
なぜなら、後者のリサーチが前者の主観的分析を客観化するという作業を起業家に強いるからであり、後者のリサーチによりビジネスモデルがより洗練されるのだし、また起業家の社会性と洞察力の審査に直結する資料となるものだからである。
ようするに、前者は起業家の才能の問題なので、VC側はよく理解できないのであるが、後者は起業家の社会常識や洞察の問題なので、VC側は比較的理解しやすいのである。
また、後者はビジネスの成功のための安定的要素だと思う。
恐らく、発明家への投資は前者がメインのハイリスク案件、改良家への投資は後者がメインのミドルリスク案件、というような感じだろうか。
私がVCなら、どちらにもバランスよく投資するだろう。

通信系のソフトウェア分野では名を知られたあるVB経営者は、ビジネスを考える際、技術の先端性にはまったくこだわらない。先端技術でビジネスを組み立てようとすると、巨額の資金を必要とするわりには市場が小さいケースがあり、そこは経営資源を潤沢に持つ企業の領域であると考えるからだ~中略~その分野では第一人者であっても、「この技術で世の中を変えてやろう」というところからスタートせず、当面は小さな高収益企業として存続するための戦略を選んだというわけだ。
(「概論日本のベンチャーキャピタル」P182)

④-3 顧客
顧客とは、やや漠然とした市場という客体を「人」にまで具体化したものである。
市場がハコなら、顧客はハコのなかみである。
VBは、市場を正確にターゲティングし、かつ、顧客を正確にターゲティングしていなくてはならない。
例えば化粧品のビジネスをするのなら、化粧品市場の分析後、自社の化粧品を買う女性の年齢や嗜好までフォーカスして考えなさい、ということだ。

市場⇒顧客⇒マーケティング

事業計画では、このようなアプローチをする。
ここでは、顧客が現状に満足していないという点が前提事項としてある。
なぜなら、その物足りなさや不満足をみたすために、我が社が今般新商品新サービスを提供し、それが爆発的に売れる、というのが筋書きだからである。
したがって、先ほどの化粧品のビジネスの場合だと、女性顧客が化粧品に対して何を求めているか、VBはまずそこから明らかにする必要があり、それが実は満たされておらず、新規参入者たるVBにも一定の「チャンス」がある、という仮説を組み立てるのだ。
顧客はいつでも賢明であり、革命的な新商品を買うのではなく、不満足(枯渇)を埋める商品を買う。
VBは新商品の革命的なテクノロジーのことよりも、顧客を想定し、顧客の不満足(枯渇)をより具体的に説明するべきである。

④-4 マーケティング
どのようにして顧客を勝ち取り、顧客に買ってもらうのか、マーケティングは市場と顧客に対する理解から始まる。
市場と顧客を正確にターゲティングし、最後にマーケティング戦略を提示する。
まあ、ここは事業計画書の書き方そのものではないので、省略するが、フィードバック、コミュニケーションといったことが今日では非常に重要だ。

この市場認識は、VBが考えたビジネスモデルが実際に機能するためのポイントなので、VCは最も注意して説明を聞く。VCがビジネスモデルに興味を持ったとしても、それが実際に機能するには、スムーズな市場参入と参入後の競合他社追い落としのための諸戦略にも実現可能性を見出し得ることが重要である。この点に無理があると、ビジネスモデルは絵に描いた餅にすぎない。
(「概論日本のベンチャーキャピタル」P178)

さて、長くなったが事業計画書の書き方の話は、次回で終わりである。