緊急事態宣言、外出自粛といった年初からの流れもあり、私は3月から、オンラインで司法書士の新人研修を受ける予定である。
例年だと地方の研修センターで泊まりこみの研修をするが、今年はコロナ禍なので受講はオンライン。
司法書士会職員の話では、試験の日程も合格発表もコロナの影響で遅れており、そのため、例年より少し遅いスタートとなる。
研修は日本司法書士連合会(日司連)の主催で、3~5月の間、グループごとに分かれて受講する。
さて、司法書士とは何なのか。
金融マンと不動産屋なら司法書士をよく知っていると思うが、多くの人は馴染みがないと思うので、ここで簡単に説明しておこう。
Wikipediaにはこう書いてある。
「司法書士(しほうしょし)とは、専門的な法律の知識に基づき、登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする国家資格である。また、法務大臣から認定を受けた認定司法書士は、簡易裁判所における民事訴訟、民事執行、民事保全、和解、調停などにおいて当事者を代理することができる。弁護士・弁理士・税理士・行政書士・社会保険労務士・土地家屋調査士・海事代理士と共に職務上請求権が認められている8士業の一つである。」
司法書士は名前の似た行政書士と間違えられることがよくあるが、行政書士とは仕事の内容が大きく異なる。
まず、司法書士のメインの仕事は法務局の登記申請(の代理)である。
不動産登記、商業登記はいずれも司法書士の独占業務である(なお、司法書士の独占業務は司法書士法第3条に規定されている)。
また、法務大臣に認定された司法書士には、簡易裁判所の訴訟代理権もあり、簡易裁判所で弁護士とほぼ同様の仕事ができる(もっとも、訴額の制約140万円を超えない等の制限がある)。
その他にも、裁判事務、供託手続(の代理)、債務整理、成年後見、財産管理、企業支援など、業務は広範囲にわたっている。
こう見ると司法書士はおおむね法律事務の専門家という感じだが、必ずしもそれにはとどまらない。
ところで、アガサクリスティーの「検察側の証人(The Witness for the Prosecution)」という有名な法廷小説がある。
法廷小説なので弁護士が登場するのだが、弁護士のウィルフレッドとともに、事務弁護士(Solicitor)のメイヒューが登場するのだ。
司法書士はたぶん、事務弁護士に近いイメージだと思う。
司法書士試験は最難関国家試験のひとつである。
長年、合格率はほぼ2~3%で推移しており、私の合格年度は2.6%と記憶するが、最近は4~5%まで上昇傾向にある。
受験準備期間は約1年半と言われているが、独学はほぼ不可能で、どのような形でも受験予備校には通う必要がある。
また、私の場合は単なるラッキーで、一発合格もほぼ不可能であると思った方がよい。
私の周囲では、3~4回目で受かった先生が多い。
平均的な合格の道のりでも、最初の受験からさらに2~3年頑張らなくてはいけないのだが、その間は仕事をしないで浪人生活をする場合も多い。
かつて司法試験は司法書士試験と同様の制度で、受験生も同様の状況であった。
その頃、弁護士の数は非常に少なかった。
しかし、ロースクール(法科大学院)制度になってからはかなり受かりやすくなり、ここ20年で弁護士はずいぶん増えた。
試験の話など志望者以外にはどうでもよい話だが、他士業と比べると司法書士の姿も見えてくるだろう。
これも多くの人になじみがない理由だと思うが、実は、司法書士の人数は格段に少ない。
司法書士23000人程度
弁護士41000人程度
行政書士47000人程度
社会保険労務士42000人程度
税理士82000人程度
公認会計士31000人程度
まさか司法書士が弁護士の半分とは思わなかった。
いや、そうではなく、弁護士がここ20年で増え過ぎたのではないかしら??
ちなみに土地家屋調査士、不動産鑑定士、弁理士なども司法書士同様、かなり少ない。
土地家屋調査士17000人程度
不動産鑑定士5000人程度
弁理士11000人程度
さて、少ないならそれだけ希少価値が高い、えらい人、すごい人なのだろうか??
いや、必ずしも、そういうことではなく、独占業務のマーケットが小さいことを意味しているのだ。
高度経済成長期が終わり、成熟と衰退の時代を迎え、今後、登記のマーケットが拡大する見込みはあまりない。
登記申請件数は年々縮小傾向である。
平成のピーク時の半数くらいまで落ち込んでいる。
人口減少と不動産市況の低迷、弁護士の方が花形職業、ということもあり、司法書士は不人気の資格である。
受験者数は年々減少し、ピーク時の半分くらいだが、、、なりたい人が減るのは順当なこととはいえ、さすがにこのデータには驚いた。
司法書士の高齢化はかなり進んでいる。
今後20~30年のうちに世代交代が急速に進むと思われるが、そうすれば大きく変化する職業とも思える。
司法書士法により、登記をはじめとした独占業務が与えられており、士業の中では比較的独立開業しやすい安定資格といわれる。
登記事件数も、受験者数もピーク時の半分程度に落ち込んだが、「過ぎたれば及ばざるがごとし」である。
今後どうなるかは分からないものの、また日本経済の成長力次第ともいえるのだが、新人研修を受けながらいろいろと考えてしまった。
(司法書士の使命)
第一条 司法書士は、この法律の定めるところによりその業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。
(職責)
第二条 司法書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。
(業務)
第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 登記又は供託に関する手続について代理すること。
二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第四号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。
三 法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。
四 裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第六章第二節の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。第八号において同じ。)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。
五 前各号の事務について相談に応ずること。
六 簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。ただし、上訴の提起(自ら代理人として手続に関与している事件の判決、決定又は命令に係るものを除く。)、再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については、代理することができない。
イ 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定による手続(ロに規定する手続及び訴えの提起前における証拠保全手続を除く。)であつて、訴訟の目的の価額が裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
ロ 民事訴訟法第二百七十五条の規定による和解の手続又は同法第七編の規定による支払督促の手続であつて、請求の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
ハ 民事訴訟法第二編第四章第七節の規定による訴えの提起前における証拠保全手続又は民事保全法(平成元年法律第九十一号)の規定による手続であつて、本案の訴訟の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
ニ 民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)の規定による手続であつて、調停を求める事項の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
ホ 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第二章第二節第四款第二目の規定による少額訴訟債権執行の手続であつて、請求の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
七 民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。
八 筆界特定の手続であつて対象土地(不動産登記法第百二十三条第三号に規定する対象土地をいう。)の価額として法務省令で定める方法により算定される額の合計額の二分の一に相当する額に筆界特定によつて通常得られることとなる利益の割合として法務省令で定める割合を乗じて得た額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は代理すること。
2 前項第六号から第八号までに規定する業務(以下「簡裁訴訟代理等関係業務」という。)は、次のいずれにも該当する司法書士に限り、行うことができる。
一 簡裁訴訟代理等関係業務について法務省令で定める法人が実施する研修であつて法務大臣が指定するものの課程を修了した者であること。
二 前号に規定する者の申請に基づき法務大臣が簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であること。
三 司法書士会の会員であること。
3 法務大臣は、次のいずれにも該当するものと認められる研修についてのみ前項第一号の指定をするものとする。
一 研修の内容が、簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力の習得に十分なものとして法務省令で定める基準を満たすものであること。
二 研修の実施に関する計画が、その適正かつ確実な実施のために適切なものであること。
三 研修を実施する法人が、前号の計画を適正かつ確実に遂行するに足りる専門的能力及び経理的基礎を有するものであること。
(出典:法令検索・司法書士法)