2020/06/18

ダビスタとサイキョウクラウド

私はふだん、Googleのクラウドサービス「GoogleWorkspace」を使っている。
テレワークで欲しい機能がほぼ全てパッケージされており、スタンダードプランなら月額1500円ほどだ。
Googleのサービスは検索エンジンもGmailもYouTubeそうであったが、時間をかけて世界最強の地位を獲得してきた。
いずれ「GoogleWorkspace」も、最強のクラウドサービスとなるのではないか。

ところで、最強クラウドというと、私は「ダビスタ」のことを思い出す。
「ダビスタ」とは、私と同じ茨城県に住む園部博之氏が開発した「ダービースタリオン」という競馬育成シミュレーションゲームのことである。
1990年代に大流行し、学生だった私も一時期、深夜まで熱中した。
初期のダビスタは、当時もう廃れていたファミコン版であった。
これは「関東版」と言われるもので、栗東厩舎と関西のレースプログラムはなく、美浦厩舎と関東のレースプログラムだけの簡単な育成ゲームであった。
シンプルで非常に面白かったので、その後、続編の全国版が出た。
まあ、地域版⇒全国版、というのは、「信長の野望」と同じパターンだ。
ダビスタ全国版の後も、スーパーファミコン、プレイステーション、ニンテンドーDSなどへと展開していった。




シリーズの途中からは様々な機能が追加されるようになり、例えばフランスの凱旋門賞が特別レースとして加わるなど、どんどん凝った内容になっていった。
ダビスタはシンプルが売りであったため、凝った内容になるのは賛否両論があったものの、最も支持されたのが「ブリーダーズカップ」であった。
ブリーダーズカップとは、プレイヤーどうしで愛馬のレース対決ができるというものである。
インターネットのない時代は、ドラクエの復活の呪文のようなパスワードをいちいち入力する必要があった。
そして、このゲームを極めたとされる何人かの「ダビスタの達人」たちが業界有名人となり、達人が最強の愛馬を持ち寄り、月刊誌上で決戦をするコーナーが大人気となった。

確か、「サラブレ」という雑誌だったと思う。
そこには、達人の最強の愛馬のパスワードが付録で掲載されていた。
私はそれを自宅で丹念に入力し、自分の愛馬と対決させて楽しんだ。
その中の1頭が、私の愛馬がどうしても勝てないサイキョウクラウドという馬なのであった。
とにかく、何度リセットしてやり直しても勝てないので腹が立った。
サイキョウクラウドは、末脚のスピードがありすぎて、テレビ画面の左端から消えてしまうのだ(東京競馬場の場合は左回りなので右端)。
その時、私の愛馬は、テレビ画面の左端で必死にもがいているのだが。
最強馬は、サイキョウクラウドのほかに、ムラキングメモリー、ノーノーブルックスなどがいた。
この3頭だけはよく覚えている。
その頃、サイキョウクラウドという名前を見て、クラウドとはどういう意味だろう、と思ったものだ。

90年代後半のダビスタブームは、異常なほどのバブルになった。
ダビスタの達人たちはダビスタ「だけ」で生活費を稼いでいた。
競馬雑誌のコラムの執筆、ゲームの攻略本の執筆や監修、ブリーダーズカップのゲスト出演や司会者などで、かなり稼いでいたようである。
ゲーム好きの青少年にとって、彼らは憧れの存在であった。
また、彼らはゲーマーの概念を大きく変えた功労者でもあった。
これまでのゲーマーは、アクションゲームでよけるのがうまいとか、シューティングゲームで連打が速いとか、並外れた反射神経や運動神経の持ち主のことで、肉体労働者としてのイメージがあった。
しかし、ダビスタはシミュレーションゲームであり、ダビスタの達人は頭脳派であった。
現実の競馬の世界には、インブリードなどの複雑な血統理論(配合理論)があるのだが、ダービースタリオンにもそれがかなり忠実に再現されており、ダビスタの達人は血統理論を分析する理論家(アナリスト)としての人気を得たのだった。
まあ、アナリストとはいっても実際には、徹夜の生産作業、検証作業という肉体労働だったろうが、次第にダビスタブームは下火となり、達人はタビスタでは食えなくなってしまった。
その後、達人の何人かは、競馬評論家に転職した。
ここまでの頭脳派は、やはりどこかに拾ってもらえるのだな、と私は感心したものだ。
元達人たちは今も競馬業界でライターや解説者として活躍していると思うが、サイキョウクラウドの生産者はいまどこで何をしているのだろう。